東北で地元の名物や文化を核に地域振興を目指す動きが増えている。仙台市はゼリー消費量の多さを売りに「ゼリーの街」の呼び名を実現しようと、4月に地元企業が協議会を発足した。音楽が盛んで「東北のウィーン」を掲げる福島県郡山市は今年から、「ウィーン少年合唱団」を招くなどイベントが盛りだくさんの市民音楽祭を始めた。地域資源を売り込もうと、自治体や企業がPRに知恵を絞っている。
「杜(もり)の都」、「楽都」に「学都」と様々な顔を持つ仙台市。新たに加わったのがゼリーの街だ。今年から7月10~16日は「ゼリーウイーク」として、各種イベントが開かれる。百貨店の藤崎はお中元会場などに「ゼリーの街 仙台」ののぼりを立て、喫茶店の「ガネッシュ・ティールーム」はゼリーと紅茶を楽しむお茶会を催す。14日には市内のホテルで市民参加の創作ゼリーコンテストも開かれる。
総務省によると、仙台は県庁所在地と政令指定都市の中で年間のゼリー購買額が最も高い。これを街づくりに生かそうとゼラチン製造のゼライス(宮城県多賀城市)など地元企業12社が協議会を設けた。奥山恵美子市長も「仙台に行って食べたいと思うゼリーを」と、応援団長として名物ゼリーの開発を後押しする。
仙台市以上に多くの顔を持つのが福島県喜多方市だ。札幌、福岡とともに日本三大ラーメンの地であるほか、蔵、そば、太極拳、ボート、グリーンツーリズムの街でもある。2006年の5市町村合併で一気に増えた。
イベントの積極開催も奏功し、合併時の06年に5市町村の合計で173万人だった入り込み客数は09年には約188万人に増加。市観光交流課は「ラーメン目当ての観光客をリピーターにする戦略が当たった」という。
仙台市と喜多方市が複数の街を名乗れるのは、それぞれ杜の都、ラーメンの街という圧倒的な知名度があるからこそ。多くの自治体は1つの街を標榜(ひょうぼう)するのにも苦労している。
08年に音楽都市宣言をし、「東北のウィーン」を掲げる郡山市。街には「楽都」と書かれたポスターが張られ、今年3月にはキャラクター「がくとくん」も誕生した。だが、楽都としての郡山は「知名度が高いとはいえない」(郡山市まちづくり政策課)のが現状だ。
かつて暴力団の抗争が多発し「東北のシカゴ」と呼ばれたが、街角コーラスでよみがえった。安積黎明(れいめい)女子高校は全国合唱コンクールで09年まで30年連続で金賞を受賞するなどレベルも高い。11年3月までの「市民音楽祭」では市の施設やスーパーなど身近な場所で市民の演奏を披露するが、県外への発信力はまだ弱いようだ。
PRの難しさは各地で共通している。バンクーバー五輪に出場した「チーム青森」の出身地である青森市は「カーリングの街」。冬季五輪の年には脚光を浴びるが、「オリンピック後は関連商品の売り上げも伸び悩む」(青森商工会議所)。継続的に効果を上げる方法を模索中だ。1世帯当たりの豆腐消費量が年間100丁を超えて全国一の盛岡市も「豆腐の街」としての認知度は低い。
名物をテーマにした街おこしは地域活性化の有効策だが、自称で終わりがちな面もある。地方都市が全国的な知名度を得るのは容易ではない。一皮むけるかどうかは、地域資源を磨く地元の熱意と連携、発信力の工夫が問われる。仙台でさえ、ゼリーが新たな顔として定着するかは未知数だ。
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