大相撲名古屋場所初日を翌日に控えた10日、会場の愛知県体育館で恒例の土俵祭りが行われた。通常の参列者は日本相撲協会の役員と審判部の親方だが、今場所は謹慎者を除く親方衆や横綱白鵬ら十両以上の力士、行司、呼び出し、床山ら約200人が異例の出席。一般にも無料開放され、相撲協会一同が土俵の神とファンに野球賭博問題など一連の不祥事を謝罪し、再生を誓った。
関取や親方ら協会員約200人が“先人と土俵に陳謝の意”を表すために、土俵の神に深々と頭を下げた後だった。体調不良の武蔵川理事長に代わって協会トップとして土俵祭りに出席した村山理事長代行が、ファンに背を向け、協会員に向かって訓示した。
“公開説教”だった。村山代行のトーンが1オクターブ上がった。「不祥事で理事長が頭を下げるのは、今回限りにしていただきたい。そう思いませんか」。黙って頭を垂れる力士、親方らに「世間から批判、非難を浴びるのは金輪際この先ないようにしていただきたい」と強く諭した。
「理事長代行というより、1ファンとしての願いを込めた。もっと言いたいことがあったけど、儀式の場だから」と村山代行。大相撲ファンの絶望と怒りを代弁した訓示には、例年の倍位以上となる約1000人のファンも大きな拍手を送った。引き揚げる力士らは神妙な表情。横綱白鵬は「まあ、いいんじゃない」と口数少なく、大関魁皇は「一生懸命やるしかない」。日馬富士は「自分はやるべきことをしっかりやるだけ。気合が入りました」と気持ちを新たにしたようだ。
不祥事に対する連帯責任として行われた土俵祭りでの謝罪。村山代行の厳しい言葉は期待の裏返し。協会は、肝に銘じて15日間の場所を全うするしかない。 (田中一正)