「口てい疫(こうていえき)」という牛や豚の病気が宮崎県で広がっています。
政府は、鳩山総理大臣をトップにした対策本部をつくり、ほかの牛や豚に広がるのを防ぐため、最終的に30万頭あまりが殺されることになりました。
口てい疫ってどんな病気なのでしょう?
口てい疫というのは、動物の「口」や「蹄
(ひづめ)」、つまり足の爪のまわりに水ぶくれのできる「疫」、つまり伝染病のことです。
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蹄は、この病気にもう一つ重要なかかわりがあります。
蹄の数によって、感染、つまりうつるかどうかが決まっているのです。
感染するのは、蹄の数が偶数の動物。例えば牛は2つ。豚は4つ。そのほかにヤギやラクダは2つ、鹿は4つなので、この病気にかかります。
一方、馬は蹄が1つ、サイは3つなのでうつらないのです。
病気の原因は「口てい疫ウイルス」。
このウイルスが動物の体の中で増えて、病気を引き起こすのです。
みずぶくれのほかに、熱が出たり、お乳があまり出なくなったりします。
でも、成長した牛や豚はこの病気にかかっても、ほとんど死ぬことはありません。
また、人に害はなく、病気になった牛や豚の肉を食べても、人間にはうつることはありません。
ただ、ウイルスの感染力、つまりほかの動物に感染する力がとても強いことが知られています。
感染した動物の吐く息や、糞の中に、大量のウイルスが含まれています。
熱や水ぶくれなどの症状が出ていない「潜伏期間」でも、ウイルスはほかの動物に感染します。
また、豚の場合、ウイルスの増え方は牛の1000倍と言われています。だから、豚が感染すると、一挙に感染する頭数が増えるのです。
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ウイルスは、干し草で200日間、生きることがわかっています。
人の服や靴についた場合、夏場でも9週間、生きています。
そして、風に乗って広がっていきます。
遠い場合は、陸で60キロ、海なら250キロもの距離を風に乗って運ばれ、ほかのところで感染するという研究もあるほどです。
今回の宮崎県のウイルスが、どこから来たものかはまだわかりませんが、今年に入ってからも、韓国や中国の北京、香港、それに台湾などで口てい疫が問題になっています。
日本でも、いつ起きても不思議はなかったのです。
死ぬことは少なくても、強い感染力で次々と病気が広がっていくのが、口てい疫の怖いところです。
だから、家畜伝染病予防法という法律で、感染を止めるために殺処分、つまり殺してしまうよう決められています。
口てい疫が一頭でも出た場合、飼育している人は、自分の飼っている牛や豚など、すべてを処分しなければなりません。
そして、ウイルスが広がらないよう、土を掘って埋めなければならないのです。
また、病気の出た農場から半径10キロ以内では、牛や豚をほかの場所に動かすことが禁止され、人や車などの消毒も徹底的に行われます。
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しかし、こうした対策をとっても感染の広がりを抑えることができなかったため、政府は感染が出ていない農場も含めて、10キロ以内のすべての牛や豚を処分することを決めたのです。
処分されるのはあわせて30万頭にもなります。
でも、埋める場所が見つからないことなどから処分はうまく進んでいません。
このため、政府は牛や豚にワクチンをうつことにしました。
ワクチンというと、病気にかからないようにするためにうつものだと思いますよね。
でも、口てい疫のワクチンは、うっても感染を防ぐことは出来ません。
感染した動物の体の中で、ウイルスが増えるスピードを抑える働きをします。
こうやって時間を稼いでいる間に埋める場所を見つけ、最終的にはすべての牛や豚を処分するのです。
農家の人たちは、育ててきた牛や豚を殺すことに大きなショックを受けますし、収入だってなくなります。
口てい疫がこんなに広がったのは、対策が遅かったからだという人もいます。
政府は、農家の補償をすることはもちろんですが、これ以上広がることのないよう、きちんと対策をとってほしいですね。
【 2010/05/23 放送(内容は放送時点でのものです) 】