2010年7月11日1時53分
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米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)が法的整理から脱し、「新生GM」として再起を図ってから10日で1年。規模の拡大から利益の追求にかじを切り、短期間で再上場が視野に入ってきた。ただ、技術開発の遅れが今後の成長に影を落としている。
GMの販売店に客足が戻りつつある。米連邦破産法の適用申請から4カ月後の昨年10月、GMの米新車販売台数は1年9カ月ぶりに前年同月比プラスになった。今年に入ってからは6カ月連続で前年を超えている。「拡大路線と手を切り、売れない車種やブランドを整理した。この結果、販売奨励金を効率的に使えるようになった」。GM幹部は好調の理由をこう説明する。
マサチューセッツ工科大院のマイケル・クスマノ教授は「法的整理から1カ月で抜け出したため、『倒産』というマイナスイメージはほとんどなく、債務を削減してコスト競争力がついた。破産法申請は正解だった」とみる。
GMは米・カナダ政府などから計500億ドル(約4兆4千億円)超の支援を受け、法的整理を通じて債務の70%近くを削減。今年4月には、公的資金のうちGM株に転換されなかった分を返済した。
今年1〜3月期の純損益は8億6500万ドル(約760億円)の黒字。経営破綻(はたん)前の「旧GM」を含めると、黒字は2007年4〜6月期以来約3年ぶりだ。エドワード・ウィテイカー最高経営責任者(CEO)は6月末の投資家向け説明会で「GMは1年前とはまったく違う会社になった。経営は一変し、何より利益を出せるようになった」と再生の手応えを語った。
収益力が高まれば、再上場も近づく。GMはこれまで年内を示唆してきたが、8月に上場するとの観測も流れている。上場を果たせば、GM株の計7割以上を保有する米・カナダ政府が一部を売却し、GMが公的管理から抜け出す道筋がみえてくる。
ただ、将来の成長力には課題が多い。GMは「ポンティアック」など不採算ブランドを次々と縮小・廃止し、売上高はピークだった10年前の4分の3程度に縮んだ。これまでは「削りしろ」が大きかったため、新生GM発足から短期間で黒字転換できたが、今後は環境技術や低コスト技術で競争力を高めなければ、持続的な成長はおぼつかない。
例えば年内発売予定の電気自動車「シボレー・ボルト」。価格は4万ドル(約350万円)近くと言われ、米アナリストは「高すぎる。そう簡単に売れるとは思えない」。
一方、ハイブリッド車ではトヨタ自動車や米フォード・モーターに後れをとり、GMが次世代技術の本命として投資し続けてきた燃料電池車は市販のめどが立っていない。米オバマ政権が「日系メーカーに1世代遅れた」と指摘した「経営難の時代」のツケは簡単に一掃できない。(ニューヨーク=山川一基)