阿蘇市では、7月から8月にかけて開かれる予定だった各種イベントが、口蹄疫[こうていえき]問題の影響で次々と中止になっている。夏の観光シーズンで客の入りを期待していた旅館業者からは、悲鳴に近い声が上がっている。
県内のイベント中止状況などを実行委員に説明し、「阿蘇火の山まつり」の中止に理解を求める吉良玲二・阿蘇市商工観光課長(右)=阿蘇市商工会
「4日に再び宮崎市で口蹄疫が発生し開催が難しくなった。中止を了解してほしい」。9日、阿蘇火の山まつり(8月19、20日開催予定)の実行委員会で吉良玲二・市商工観光課長が委員に理解を求めた。県内外から延べ約3万人が訪れる市最大規模の夏祭り。異論はなく承認された。
市内には放牧地も多く万一に備え防疫を優先させようと、市は運営にかかわる各種イベントを自粛するほか、民間にも協力を求めている。これまで、阿蘇火の山まつりを含め市が運営にかかわる6~8月の8イベントに加え、行政区や商店街が行う2イベントも中止になった。
市内で牛120頭を飼育する傍ら、旅館業を営む井恒博さん(62)は「阿蘇カルデラスーパーマラソン(6月)の中止では120人の宿泊がなくなり約100万円の減収となった。夏休みも予約は低迷している」と苦しい状況を説明。「子牛の競り市が再開され少し落ち着き始めている中、人の移動が少ない体育館など屋内での催しは何とか実施できないのか」と残念がる。
市観光協会の稲吉淳一会長が経営するホテルも、6月の宿泊者は前年比で約1割減。稲吉会長は「観光は人々の気分に左右される産業。イベントの中止が続くと観光客の気持ちも冷え込んでいきがち。早く終息宣言が出てほしい」と状況の好転を待ちわびる。
一方、地域振興面から開催を模索する動きもある。九州・沖縄と山口から64チームが出場する「大阿蘇旗学童軟式野球大会」(8月21~23日)。主催する一の宮マリンズの鳴瀬裕治監督(60)は、選手や保護者ら1600人が市内に宿泊する地元への経済効果を考慮。宮崎県のチームには出場を自粛してもらった上で、消毒液や消石灰で防疫に努める。(福山聡一郎、三賀山雄三)
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