2010-07-10
■[就職]志望動機の使い分け方、使い分けられ方
新卒採用活動にタッチせずに済んでホッとしている中年サラリーマンが、街で就活スーツの女子大生を見かけることも少なくなった*1今日この頃、 面接で志望動機をきくのもうやめないか? 働くモノニュース : 人生VIP職人ブログwwwとそのブックマークを読んで思ったことを書いてみます。
ってか、一行でまとめると、元エントリ&元2ちゃんねるのスレが「中途採用」を前提として話が始まっているのに、新卒正社員採用における志望動機という特殊な世界の価値観にどっぷりつかったレスが鈴なりになっているのをみて驚愕して危惧を覚えたってのが正直なところなんですけど。
応募者の性質
そもそも、就職の面接を大別すると、「正社員の新卒採用面接」「正社員の中途採用面接」「期間雇用など非正規社員の採用面接」に分けられます*2。それぞれの応募者の特徴を表にするとこんな感じです。
正社員新卒 | 正社員中途 | 期間非正規 | |
---|---|---|---|
応募側の職業経験 | なし | あり | 不明 |
応募側が保有する能力 | 不明 | 不明 | 不明 |
雇用側が期待する能力 | 全般的なポテンシャル | 特定分野の即戦力 | とにかく単純労働 |
応募側が希望する雇用期間 | たぶん定年まで | 不明 | 不明 |
雇用側が保障する雇用期間 | 定年まで長期 | 定年まで長期 | 短期 |
報酬 | 大差なし | スキルによって幅あり | 単純労働の市場水準 |
雇用側が面接を通じて知りたいこと
なので、雇用側が面接を通じて知りたいことも、それぞれによって全く異なります。すごくシンプルに書くとこんな感じです。そのために、→のようなことを会社は考えます。
【正社員新卒】
- 会社が期待するポテンシャルを持っているのか → これまでの職業経験がないので、間接的にしか知りえない
- 会社がオファーする長期まで働くつもりがありそうか → 同じく間接的にしか知りえない
- 内定中あるいは採用直後に他社に逃げないか → 同じく間接的にしか知りえない
【正社員中途】
- 会社が期待する即戦力を持っているのか → これまでの職業経験から分かりそう
- 会社が期待する期間、働くつもりがありそうか → これまでの経験見ればなんとなく分かりそう
- 他社に逃げないか → その人間のスキルと、要求する金目で分かりそう
【期間雇用非正規】
- 会社が期待する単純労働をきちんとやってくれるか → 仕事は簡単なので、あとは人柄とか通勤の容易さとかかなあ
- 会社が期待する期間、働くつもりがありそうか → あんまり長期を期待していないから、従事する仕事の強度に対して我慢強くて、時給に納得してそうならそれでよし
中途採用と非正規採用の正しい答え方
会社側がはっきりこのような「知りたいこと」を直球で聞くと、「できます」「やれます」という答えが返ってくるに決まっています。なので、会社は、面接の時に、当たり障りのない「志望動機」という形でこれらの知りたいことを確認するわけです。当然、応募者側が「志望動機」を問われた時の答え方は変わってきます。
中途なら、これまでの経験をもとにその会社、あるいは求められている業務にいかに自分は貢献できるスキルを持っているか、ということと、それなりにその会社に居続ける動機があるんですよ、ということを説明できればそれで十分。
期間雇用なら、動機は「時間」を売って「金」にしたい、なんてことはお互い分かっているわけですから、志望動機に「通学経路の途中だから」とか「家から一番近いから」とかというのが入っていてもなんら問題がないというか、採用側としては、その答えが一番安心できる答えだったりするわけです。
新卒採用の歪んだ特徴
ところが、新卒採用には会社が知りたいことに対して、マッチするデータが全くありません。コミュニケーション能力とか、地アタマのよさとか、徹夜に負けない体力とか、ストレス耐性とか、色々と会社が求めるものはそれなりに高度な、しかしながら漠然とあるのですが、これらを直接的に計る手段が会社にはありません。
そこで、会社は、求めるものを知るために、「ネタは何でも良いから長時間の対話を、自社の比較的標準的以上の社員にやらせる」「それを複数回やることでスクリーニングをかけていく」という、極めて回りくどい方法を取ります。わからないなりに、うちのまともな社員が何人も見てOK出すんだったら、まあ間違いないだろうと、そういうわけです。
そこでの「志望動機」は、面接官に言わせれば、話のネタの一つでしかありません。でも、たとえば「大学で何を勉強したの?」というよりは、より汎用性が高い質問です。別の言葉で言えば、いろんなのが混じりこんでいる面接官でも、「志望動機」なら誰でも判断できるっつー訳です。余談ですが、私も面接担当したことが何度かありますが、大学で勉強したことを聞いた時に、インド哲学のことを10分間語られたときはどうしようかと思ったし、遺伝子の多様性を情熱たっぷりに聞かされたときはほとほと困り果てました。幸い、二人とも説明は分かりやすくてアタマよさそうだから僕の段階は通したけど、これが学問が嫌いな別の面接官だったらたぶんアウトだったでしょう。その点、面接官にとって「志望動機」なら誰でもわかるし、誰でも突っ込めるし、誰でも深い話ができる。サラリーマンならな。
そういう回りくどさの中で、就活コンサルタントwwなどという人たちが暗躍し、元エントリとかブックマークにも現れているような、本当かウソかわからないような伝説が流布してしまうわけです。社会貢献について語らなければいけないとか、語っちゃ駄目だとか。業界の知識は必須で、有価証券報告書を読んでない奴は落ちるとか。就活ではウソつかないと駄目だとか、面接なんていかに演技したかが勝負を決めるとか。はっきり言って、たまたまそういう志向を持つ面接官に遭遇したかどうかという運だけ*3なのに、そのことが絶対の事実であるかのように語られてしまう歪さが新卒採用には存在します。
そして、新卒採用の難しさから固有に発生した発想法が、新卒採用がここ十数年ほどあまりに競合の度が増すばかりだったので、その歪さを加速させる形で発展してしまいました。そうやって発展した歪さが、あたかも採用一般について当たり前のことであるかのように中途採用や非正規採用の世界にもにじみ出ていることは、とても不合理で悲劇的なことだと思います。
中途・非正規の応募者が新卒採用の歪さを持って、採用側がリーズナブルであればそのすれ違いに悲劇が存在します。
中途・非正規の応募者も採用者も新卒採用の歪さに汚染されているとすれば、その合理性を欠く選抜基準がだらしなく蔓延していることで、さらなる悲劇が生じます。
まとめ
自分が何のために応募し、募集側が何のために募集しているか、よーっく考えてみないと、損しますよ。お互いに。
(参考エントリ)
*1:潜在化しただけという話もありますが
*2:金融とかITとかに代表される高度なスキルを要する期間雇用社員の採用は、限りなく正社員の中途採用面接に近似しますが、この際その類の限界事例は詳しく書きません。ここでは期間雇用は、単純労働に従事する代替可能性の高い労働としておきます。
*3:だからこそ、新卒面接においては会社は時間と体力の許す限りたくさん訪問しなければいけない。これも新卒採用の歪さの一つ。
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