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きょうの社説 2010年7月11日
◎きょう投票 消費税増税の是非に審判
今回の参院選は一言でいえば、鳩山政権に代わって出直しを図る菅政権を認めるのか、
歯止めをかけるかの選択である。その際の大きな判断材料は、やはり選挙戦で最大の焦点となった消費税増税の是非であろう。参院選は本来なら、政権交代後の民主党政権をどう判断するかという中間評価のはずだ った。選挙の意味を変えたのは、ほかならぬ菅直人首相である。野党第1党の自民党も消費税増税を主張しているが、政権党の党首が具体的に踏み込んだことは、それが選挙結果次第で一気に現実味を帯びるという点で重みがまったく違う。 消費税増税は日本経済の行方を左右し、国民に負担を強いる極めて大きなテーマである 。鳩山政権では議論さえ封印していた消費税を前面に出したことで、増税に頼らず政策を実現するという民主党マニフェストの基本構造も大きく変わった。さらにいえば、消費税をめぐる菅首相の一連の発言は、これから政権運営を担うリーダーとしての資質や政治手法を見極める判断材料にもなる。 選挙戦で消費税が争点化され、社会保障や税制全体をどうするかという、より大きなテ ーマが浮上した。景気の安定をはじめ、国会議員の定数削減や公務員改革など優先して議論すべき課題は目白押しである。そうした問題を抱えながら、中途半端なかたちで増税の是非を問おうとしても国民は納得できないだろう。 鳩山政権は普天間問題の迷走や「政治とカネ」で行き詰まり、政治の信頼を失った。菅 首相の就任で内閣支持率はV字回復したが、消費税発言で急落した。当初の高い支持率も、結局は前政権の失望の反動に過ぎない。首相交代のご祝儀相場に浮かれ、政権のつまずきへの真摯な反省を怠ったツケが回ってきていないだろうか。 鳩山政権は「仮免許」の段階だったとよく言われるが、消費税論議を見る限り、菅政権 もまた周囲の状況をよく確かめず、一つの方向に突っ走るハンドルさばきの危うさがみえる。民主党にどこまで政権担当能力が備わっているかという鳩山政権から続く疑問と、野党の主張を比べながらの判断を迫られる参院選である。
◎「地質遺産」 石川の大地で認定めざせ
白山市の「環白山悠久の里づくり協議会」は今年度から、白山麓一帯の地形や自然環境
を発信するため、日本のジオパーク(地質公園)の認定をめざす。いわば「地質遺産」であるジオパークになれば知名度アップにつながり、観光面でのインパクトもアップする。多彩な地形に富む石川、富山一帯でこれまで認定地域がないのは意外な気もするが、郷土の価値を掘り起こす意味で大地を見つめ直し、新たな切り口で地質遺産に光をあててみたい。ジオパークは、貴重な地形や地質、火山、断層などを持つ自然公園として認められたも ので、教育や観光を通じた地域振興活動も重視するのが特徴である。2004年にユネスコの支援で設立された「世界ジオパークネットワーク」が認定する世界ジオパークには、日本から洞爺湖有珠山、糸魚川、島原半島が選ばれている。 日本ジオパーク委員会によって国内のジオパークとして認定されているのは、これら3 地域を含む11地域があり、「世界」への認定めざし条件を整えている。北陸では「恐竜渓谷ふくい勝山」が認定されているのみである。 白山一帯では、白山スーパー林道を動脈として、中京方面からの観光誘客に向けて資源 を掘り起こす動きが広がってきている。 まずは国内での認定をめざす環白山悠久の里づくり協議会は、本格的な地質調査に取り 組むそうだが、アウトドアの体験型観光が浸透する中で、ジオパークの目玉にもなる白峰の手取層群や百万貫の岩などを巡る周遊コースの設定や、遊歩道の整備などにも、関係自治体と協力して取り組みたい。 富山の立山一帯でも、白岩砂防堰堤(えんてい)の歴史的業績を前面に「立山・黒部〜 防災大国日本のモデル−信仰・砂防・発電−〜」として世界文化遺産をめざしている。 その構成要素の柱となる立山カルデラは、ユニークな地質現象を顕彰する「日本の地質 百選」にも選ばれている。世界遺産運動を盛り上げる意味でも、ダイナミックな自然景観そのものの魅力にも光を当て、ジオパークへの認定をめざしてもいいのではないか。
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