宮崎県の口蹄疫(こうていえき)問題が長期化する中、4月20日の発生以降7月6日までの約2カ月半で、口蹄疫を要因とした県内の離職者数が179人に上ることが、宮崎労働局のまとめで分かった。うち畜産経営者やその従業員が84人で、4割超を占めた。一方で、ほかの離職者は、飲食業や運送業からなど、多岐にわたっている。口蹄疫が畜産業だけでなく他産業の雇用にも影響し、地域経済全体に影を落としている状況が浮き彫りになった。
同労働局が、県内七つのハローワークと労働局に相談や失業手当手続きのために訪れた離職者から、その理由を聞き、口蹄疫が要因とみられる人数を集計した。
畜産業からの離職者84人のうち、川南(かわみなみ)町など県東部の被害集中地域にある「ハローワーク高鍋」が60人を占めた。同所の「農林業」(畜産業含む)からの5、6月の2カ月間の離職者数は、例年計20人程度で、その増加ぶりが際立っている。
感染の疑いやワクチン接種などを理由に家畜をすべて殺処分した農家が多く、競りの中止で収入が途絶えて経営が成り立たなくなった農場もあり、離職者が増えたとみられる。
畜産業から以外の離職者は95人。うちハローワーク高鍋は28人で、ほかは県内各地に広がる。
業種別では「出荷がないので、仕入れもできない」(精肉卸業)や、「畜舎の建設や補修工事がなくなった」(建設業)など、畜産関連業からの離職が目立った。
そのほか、県が出した「非常事態宣言」でイベントや不要不急の外出自粛を求められた影響で、「宴会客がゼロになった」(飲食業)や、「団体旅行がなく、貸し切りバス需要が減った」(観光業)というケースも。運送業では「宮崎ナンバーというだけで仕事がなくなった」と、風評被害を離職の原因に挙げた人もいた。
8日、ハローワーク高鍋に職探しに来た川南町の元養豚場従業員男性(53)は「豚が殺処分となり仕事を失った。早く安定した職を探さないと家族を養えない」と切実な表情。飲食店でパート従業員を雇っている高鍋町の女性(62)は「売り上げは例年の6-7割。雇用は守りたいが、これ以上長引くと分からない」と話した。
=2010/07/10付 西日本新聞朝刊=