【注意!】
チュウニです。
昔書いたヤツを手直ししているだけのため、文章能力は低いです。
オリキャラ満載。オリ設定も満載。
ジャンルとしては、虐められっ子主人公成長モノ。バトル有り。
【注意終わり!】
昔から、普通に幽霊が見えた。
あまりにはっきり見えるものだから、生きている人との区別なんかつかなくて。
普通に話しかけているうちに、僕は周りから気味が悪い子、として認知されて。
誰も、友達がいなくなって。
だからなおさら、幽霊と話して。
気がつけば、僕は虐められっ子になっていた。
第一話
「~~~~~~っ!」
ドカン、と背後ではじけ飛ぶ塀を雰囲気で確認し、永見譲治は涙目で走る速度を上げた。
その背後から追うのは、なにやら仮面をつけたバケモノだ。
「ぼ、僕が一体何したんだーー!? っとぉ!?」
運動不足の、少し太めの180cm後半はある大柄な体は思いのほか体力は無く、すでに息は切れ切れだ。本人はスポーツ刈りだと言い張る角刈りからは汗が絶え間なく流れ、ワイシャツをべっとりとぬらしている。
「はっ――何でっ――はっ――こんなっ――」
その目にはすでに涙がにじみ、口からは情けない言葉が漏れ出していく。もとより、彼の心はさほど強くは無いのだ。仮面をつけたバケモノに追われる、そのことに恐慌を起こさないということこそがすでに奇跡だった。
そして少年は考える。パニックになりかける精神を必死に押さえつけ、今自分が立たされている場所を考える。
(ラノベとかエロゲとかならよくあるパターンだよな、バケモノに追われるって。ユーレイがいるからまさかとは思ってたけどほんとにいるとは、バケモノ)
パニックになりかけの頭は、その反面思いのほか冴えていた。考えていることはくだらないことだったが。
(だけど何で僕が狙われる? 確かにここら辺はあまり人が通らない場所だけど……偶然? まあそう考えれば終わりだけど、それでも何かひっかかる。何より、あんなバケモノがいるんだったらネットとかで噂になっているはずだし……だったら、僕が化け物に狙われる“何か”を持っていると考えたほうが自然だ)
だとすれば……と、譲治は自分の特徴を思い浮かべていく。
まず思い浮かぶのはオタクだ。
だがあのバケモノがそんなものを察知するとは思えない。ならば――
(幽霊が、見えること)
これだろうか。
小さなころから普通に幽霊が見えて、生きている人と同じように会話が出来て。
触ることも出来て、子供のころは普通に彼らと遊んでいた。
もっとも、そのせいで子供のころから周りから君の悪い子供だといわれ、敬遠されがちだったが。
(これか? だったらそれが一体なんだ? 王道的にはユーレイが見える人には霊力があって――まさか。僕に何か力みたいなものが眠っているっていうのか?)
ぞくり、と肌が波立つのを感じる。
そして見上げる。あのバケモノが出てきた――あの、空の割れ目を。バケモノは、そこから次から次へと出現していき――
バギン、となにやら光の筋のようなものに貫かれ、霧散した。
(なんだあれ? 何かに攻撃されている?)
攻撃? では、あのバケモノと戦っている存在がいるということだ。
(ともなれば――)
ぞくっと首筋に悪寒が走る。本能に任せ、前にとんだ。
「くぁっ――――!!」
バガン、とコンクリが爆発したように跳ね上がる。あのバケモノだ。
(頼むから僕を襲っている化け物を何とかしてくれ~~~~!!)
涙を流しながら、譲治は心の中で絶叫し、逃走を再開する。しかし、それも長く続かなかった。角から、顔見知りの人物がその姿を現したのだ。
「くっ、国枝さん!?」
「……ん? 永見?」
角から現れたのはクラスメイトの国枝鈴。その事実に、譲治は歯噛みする。今まで人とかち合わなかったのは幸運ともよべたが、よりにもよって知り合いとかち合わせするとは思ってもみなかった。
最悪の状況だった。しかも向こうはこちらに気付いているようだが、その表情からは譲治の背後から追いかけてくるバケモノのことは見えていないのだろう。
思わず、譲治は叫んだ。
「逃げて!」
「……は?」
その言葉に、鈴はいぶかしげに眉をひそめる。当然だ。自分に向かって迫ってくる男が逃げろと叫ぶのだ。しかも相手は自分のクラスの嫌われ者。鈴自身はなんとも思っていないのだが、彼女の友人が彼を毛嫌いしているため、なんとなくだが印象は悪い。
だが、譲治にはそんなことかまっていられない。何せ、命がかかっているのだった。
「ああっ、くそっ!」
自分が直前になっても、ただ訝しげに眉をひそめるだけの鈴に、譲治は緊急事態だからと勢いそのままに押し倒そうとして、
「何するのいきなり」
「ぶべらっ!?」
鈴の靴裏とキッスをする羽目になった。思わぬ衝撃に、地に沈む譲治。しかし、状況はそれを許してくれなかった。
「へえ、本当に人は『ぶべらっ』と発音するのねー」
なんて批評する鈴の背後に、
「――っ!」
バケモノの、姿――
「ええいっ!」
「――ぇ?」
それから反応できたのは奇跡に近い。
譲治は彼女の手を取り、自分のほうに引き倒す。その数瞬後、今まで鈴がいた場所を、巨大な腕がなぎ払った。それはいとも容易くブロック塀を突き破り、轟音を立てて破片を撒き散らす。
「なっ……」
それを認め、絶句する鈴。当然、鈴にはバケモノの姿など見えていない。彼女に見えたのは、何もない空間が突然爆発したかのような光景だった。
その横で、譲治の頭はフル回転していた。平均と比べ格段に高いIQを買われ、特待生として学校に在学している彼の頭は、この状況下、人並みはずれた回転を見せていた。
しかし、それでも最適な行動は思い浮かばない。当然だ。バケモノは人知を超えた存在なのだ、最適な行動など、譲治が知るはずもない。
だがそれでも、と譲治は鈴を立ち上がらせた。そして、自分の後ろに立たせる。
逃げる、という選択肢はなかった。先ほどの動きで、足をくじいていたのだ。さらに鈴もいる。もう、あのバケモノに追いつかれない速度で逃げ続けるのは、無理だろう。
(だけど……それでも、死にたくない……死なせたくはない……なんとしても――)
ゆっくりと、バケモノが自分を見据える。突然眼前に現れたときはにべもなく逃げ出したので、これがバケモノの姿を見たのが初めてだった。逃げようともしない自分らに、バケモノは、にたぁ、とその巨大な口で笑みを浮かべる。
そしてバケモノはゆっくりとその腕を振り上げ――
「な、永見……? い、一体これは――?」
(頼む……僕に何か力があるなら、目覚めてくれ! 国枝さんを――)
それを振り下ろそうとし――
(死なせたくないんだ!)
そして譲治は、その腕に吹き飛ばされた。
いんたーるーど
「……ふむふむ、これで大詰めッスかねぇ」
倒れ伏す少女の容態を見終え、浦原喜助は空を仰ぎ見た。相変わらず、その空の裂け目は健在で、そこからは仮面をつけたバケモノ――虚が押し寄せてくる。いくら餌を撒いていたとしても、この量は異常だった。
「近いッスかねぇ」
このままいけば、間違いなく“アレ”が出てくるだろう。
ある意味で、これは切っ掛けだった。未だ静観を決め込む彼らはこれを切っ掛けとして動き出すことは予想に容易く、霊力を未だ取り戻せていない彼は、回復の可能性が見えてくる。
そして、何より――
「店長」
大男――茶渡泰虎を肩に抱えている、筋骨隆々とした大男、鉄斎が今まで喜助が見ていた少女――井上織姫を抱えあげ、静かに声を発した。
「ん、はいな、いきましょうか。アタシたちはアタシたちで、やることあるッスからねぇ」
そう。やらなくてはいけないこと。これから起こる戦いの、少しでも勝率を上げるための手段。勝たなくてはならない戦い。ほぼ十割の確率で負けるであろうこの戦いを、少しでも勝ち目のあるギャンブルへと変えるための、彼自身の戦いへの切っ掛け。
「さて。そろそろ移動しましょうか。時間も――おや?」
そうして行動を起こそうとしたところに、妙な霊圧を察知する。それは巨大でありながら不安定で、今にも壊れそうな、そんな儚さも感じるものだった。
「……おや」
これは予想外と、喜助は行き先を変更したのだった。
いんたーるーどあうと
いんたーるーど2
国枝鈴は混乱していた。町を歩いていたら、クラスメイトが何をトチ狂ったのか自分を押し倒そうとしてきて、それを撃退すればなおしつこく自分を引っ張り込んだ。ちょっとむかついたので一発殴ってやろうかと腕に力を入れたまでは良かったが、その背後でいきなりブロック塀が爆発したように弾けとび。クラスメイトが立ち上がって自分をかばうように前に立った瞬間、彼は車にはね飛ばされたかのように吹っ飛び、無事だった箇所のブロック塀を巻き込んでどこかの家の庭に倒れている。
瓦礫で良くは見えないが、その体からところどころ出血しているのが見えた。アレは、どう見てもやばい状態というのではなかろうか。
だが鈴としてもどうすればいいのかわからないのだ。駆け寄ろうにも、自分の前に立つ“ナニカ”の圧迫感が強すぎて動けない。まったく見えもしないのに、しかしそれでも鈴の体はおびえていた。目の前の存在に。
「……あ」
がくがくと足が震えた。次第にそれは上半身に伝わっていき、ぺたん、としりもちをつく。腰が抜けたのだ。
初めての感覚だった。自分はお世辞にも愛想がいいというわけでもなく、感情を表に出さないほうだが、無感情というわけでもない。しかし、それでも本能的に怖いという感覚は味わったことがなかった。
それを、今自分は味わっている。そのことに気付くのに、数秒を要した。
「い、」
自然と、声が漏れる。
「いやあああああああああああああ!!」
そして、
「こんのやろおおおおおおおおおおお!!」
バガン、と、横合いから飛び出してきた漆黒の存在が、その圧迫感を放つ存在を、殴り飛ばしたのだ。
「……え?」
鈴は呆然とその乱入者を見上げる。その存在は、まさに異形の一言に尽きた。全身を覆う、甲殻類のような漆黒の外骨格に、二本の角を持つ鬼のような兜をつけている。あまりそっち方面の番組は見ないほうだが、昔見た子供向けの特撮番組では、出てきた瞬間に悪役に分類されそうな姿形だった。
ゆっくりと、それが自分を見下ろす。そこで、鈴の意識は途切れた。
いんたーるーどあうと
「……なんだこれ……」
外骨格の中で、譲治は呆然とつぶやいた。バケモノに吹き飛ばされ、何かがはじけたと思えば纏っていたこれ。これが、自分に眠っていた『力』なのだろうか?
(……いや、そんなことどうでもいい)
譲治は気を失った鈴をかばうように立ち、バケモノを見据える。どういうわけか、この形態になってから知覚が妙に発達しているのを感じた。今なら、あたりを舞う塵芥の一粒ですら知覚できる。
(……いける)
ぐっと、足に力をこめる。人間、腕の力より足のほうが強い。ならば、この形態でもそうだろう。それに何より――
(こういう……)
体を起こしたバケモノに向かって突進する。もう、恐怖はなく、あるのは『勝てる』という確信だけだった。
(パターンでの……)
もう体の痛みはない。どうやらこの形態は、自己治癒能力も相当のものらしい。
それに感謝しつつ、譲治は飛びあがった。眼下に、バケモノを見据える。
(必殺技は――)
轟ッ、と背中から何かが噴出する。
「蹴り技がっ、基本だろ!!」
天地が震える。それはまるでイカヅチの如く、大地を叩き潰し。バケモノを、跡形もなく吹き飛ばした。
「へ、へへ……やっ……た」
もうもうと立ち込める土煙の中、それを確認して、譲治は満足げに――倒れ伏した。
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リハリビついでに昔書いたヤツを手直ししてみる。
チュウニです。
7月3日修正。BLAECHってなんだw
7月3日修正。注意点追加。