英国:キャメロン連立政権誕生 2大政党制は崩壊

2010年5月12日 11時16分 更新:5月12日 12時7分

官邸に立つキャメロン新首相=ロイター
官邸に立つキャメロン新首相=ロイター

 【ロンドン笠原敏彦】6日投開票の英総選挙後の連立交渉の結果、第1党・保守党のキャメロン党首が11日夜(日本時間12日朝)、エリザベス女王から任命を受け首相に就任した。キャメロン新首相は第3党の中道左派・自由民主党と連立政権を発足させ、クレッグ自由民主党党首は副首相に就任した。英国で連立政権が誕生するのは戦後初めて。英国の2大政党制は名実ともに崩壊した。政権交代は13年ぶり。ブラウン首相は同日、辞任した。

 キャメロン首相は43歳7カ月での首相就任となり、1812年のリバプール卿の42歳以来最も若い首相の誕生となった。

 キャメロン新首相は女王の任命後、官邸前で「保守党と自由民主党が適切で完全な連立を組むことが安定した政権をもたらす正しい道だと信じる。党の立場の違いを脇に置き、国益のため懸命に努力する」と連立政権発足の理由を説明した。

 新政権の枠組みは明確になっていないが、自由民主党から5人が閣僚ポストを得る見通し。内閣の規模が現在と同様の二十数人なら2割以上で、本格的な連立政権となる。

 外務、財務、国防相など主要ポストは保守党の「影の内閣」ヘイグ外相、オズボーン財務相らが指名される。

 今選挙は36年ぶりにどの政党も過半数に達しないハングパーラメント(宙づり議会)となり、キングメーカーの自由民主党が保守党、労働党と並行して連立交渉を進めた。投開票日から5日間の交渉を経て、自由民主党はより安定政権となる保守党との連立を選択した。英メディアによると、労働党の政策の柔軟性のなさが問題になったという。また、大敗した労働党との連立は有権者から反発を招くとの計算もあったとみられる。

 保守・自由民主党の合意で、現行の完全小選挙区制に比べ、より少数派の票が考慮される「優先順位付き連記投票制」など改善案が国民投票にかけられる。選挙制度改革でも2大政党制の改変が進むことになる。

 新政権には、対GDP(国内総生産)比で11%強に上る財政赤字の削減問題が最大の課題。また、昨春噴出した議員経費流用問題で失墜した政治への信頼回復も大きなテーマだ。政治路線が左右で分かれる両党にとっては、政権の結束維持も焦点となりそうだ。

 保守党による政権交代は79年のサッチャー政権誕生以来、31年ぶり。政権交代により、ブレア、ブラウン両氏が主導した13年間にわたる「ニューレーバー(新労働党)」時代は幕を閉じた。

 ◇国王の血引く43歳

 デビッド・キャメロン氏 1966年10月ロンドン生まれ。19世紀の国王ウィリアム4世の血を引く裕福な家柄に育ち、名門私立イートン校、オックスフォード大卒の典型的エリート。サマンサ夫人(39)も17世紀の国王チャールズ2世の血を引く。

 民間テレビ会社勤務などを経て01年に下院議員初当選。05年に「影の内閣」教育・技能相。同年の総選挙後に辞任したハワード保守党党首に代わり、39歳で党首に就任した。

 自転車が趣味。北極圏を訪問して地球温暖化問題への関心を示すなど、「リベラルな保守党員」の一面も見せる。演説上手でも知られる。

 2男1女をもうけたが、昨年2月、難病の長男を6歳で亡くした。夫人は第4子を9月に出産予定。現職首相の「赤ちゃん」誕生はブレア氏に続くことが確実。ブレア元首相の43歳11カ月より若い首相就任となる。

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