結婚している夫婦間の子に比べ、結婚していない男女間の子(婚外子=非嫡出子)の遺産相続の取り分は「半分」と定められている。この民法の規定が、法の下の平等を定めた憲法に違反するかが争われた裁判で、最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)は、審理を大法廷(裁判長・竹崎博允(ひろのぶ)長官)に回付することを決めた。7日付。
大法廷は長官と14人の判事全員で構成され、最高裁判例の変更や憲法判断をする場合などに回付される。婚外子の相続差別規定について、最高裁は1995年に「合憲」とする大法廷の決定を出している。その後、小法廷でも結論としては同様の判断が続いていたが、少数意見で違憲性を指摘する裁判官も絶えなかった。大法廷回付により、15年前の判例が見直される可能性が出てきた。
2002年に死亡した和歌山市の女性の遺産をめぐる家事審判で、女性の夫(故人)との間に生まれた子2人と、女性の婚外子1人の間で相続割合が争われた。夫との間の子1人が07年に死亡してその相続も必要になったため、兄弟姉妹の間でも、父母の片方だけが同じ子の取り分を、両方とも同じ子の半分とする規定も争点になっている。
和歌山家裁、大阪高裁とも95年の最高裁判例を引用して婚外子の取り分を半分とする判断を示し、婚外子側が最高裁に特別抗告していた。
直近の最高裁判断は、09年9月の第二小法廷の決定。結論は「合憲」だったが、4人の裁判官のうち1人が「違憲」とし、「合憲」とした3人のうちの1人も「違憲の疑いが極めて強い」と指摘していた。
婚外子の相続差別禁止については、選択的夫婦別姓制度の導入などと合わせて1996年に法制審議会が民法改正を答申。だが、「家族制度を壊す」などの抵抗があり、実現しなかった。民主党の千葉景子法相が改めて法改正を目指しているが、連立を組む国民新党の反対もあり、法案は提出されていない。(延与光貞)