今まで何をやっていたんだろう。高次脳機能障害の男性を取材しながらそう思った。交通事故や病気で脳に損傷を受け、記憶などに支障が出る障害。男性は現金管理が困難だが、見た目や会話は普通で本人も自覚はない。「何で障害といわれるのか」とギャップに悩んでいた。記憶障害がある別の男性は、「家族と思い出が話せないのが寂しい」とつづった。
交通事故の記事は山ほど書いてきた。だが、その裏にこうした苦しみを抱えた人たちがいることは、きちんと取材してこなかった。「支援サービスの整備は進んでいない。障害自体がまだあまり知られていないから……」。家族の言葉に責任を感じた。(山田)
毎日新聞 2010年7月10日 地方版