【コラム】サムスン電子好業績の陰で苦しむ国民(下)

 一方で内需型の企業は、資金を確保できずにいる。既に、貯蓄銀行と建設業界は構造調整に突入したが、これは昨年に続き2回目だ。両業種とも営業活動の大半は国内で行われる。先ごろ経営難の貯蓄銀行を救済するため、2兆8000億ウォン(約2050億円)の公的資金を投入するとの発表があった。一部企業の手に余る現金に銀行が群がり、一方では弱りきった企業に国民の税金がつぎ込まれているのだ。

 サムスン電子の低い税負担と経営難の貯蓄銀行救済につぎ込まれる税金には共通点がある。誰かがその分を負担しなければならないということ。そして、その税負担が好業績に沸く企業の社員から経営難の建設会社の非正社員にまで、無差別に分散している、という点だ。

 現政権は選挙で惨敗するや、庶民重視の政策を再び掲げた。景気回復を実感できない層の心情に同情する大統領の発言もあった。

 事実、国民の幸福度は現政権になって急速に低下している。経済的な豊かさが必ずしも国民の幸福感につながるとは言えないが、経済学者は国民の幸福度と最も関連性がある指標として、一人当たり国民所得を挙げる。

 韓国人の一人当たり国民所得は、2007年の2万1695ドルから09年には1万7175ドルに減少した。ウォン建てではやや増加したかもしれないが、ドル建てで見れば20%も減少したことになる。今年はやや回復したとはいえ、政権発足時よりも所得が増える可能性はない。

 李大統領は一時、国民幸福指数を設定すると公言していたが、いつしか立ち消えとなった。いくら優れた幸福指数を打ち出しても、国民が幸せを実感できるような成績は収められないからだ。

 少数の大企業だけが恩恵を受ける政策方向を改めない限り、庶民重視の看板は見かけだけで、国民の幸福度が高まるはずはない。

宋煕永(ソン・ヒヨン)論説主幹

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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