【コラム】サムスン電子好業績の陰で苦しむ国民(上)

 日本の経済産業省が先月公表した資料がある。サムスン電子とシャープの法人税負担(2008年)を比較したところ、サムスン電子は10.5%、シャープは36.4%だった。シャープが支払った法人税はサムスン電子よりも1500億円多く、その差は液晶パネルの亀山第2工場(三重県)に対する投資額を上回った。

 同資料は、日本の法人税負担が重すぎるがゆえに、韓国との競争に押されてしまうと強調する内容だ。言い換えれば、サムスン電子は法人税負担が1500億円少ない分、韓国政府がサムスン電子のために工場を1カ所建てたに等しい計算になる。

 サムスン電子の好業績はとどまるところを知らない。四半期ごとに「過去最高」を達成し、今年の営業利益は20兆ウォン(約1兆4700億円)を超える見通しだ。一つの会社の利益としては、韓国人がこれまで目にしたこともないような金額だ。20兆ウォンもの資金があれば、売却がささやかれるウリ銀行を買収した上、外換銀行のような中堅銀行を買収することも可能だ。

 決断力ある技術開発投資、適切な組織管理、能力ある人材の採用など、サムスン電子の強みに文句を付けるつもりはない。世界的企業として成長する土台を自ら築いた努力は、高く評価されて当然だ。ただし、歓呼に沸くその陰で、誰かが犠牲になっているという事実も知っておくべきだ。

 安値で部品を納入する中小企業の悲鳴をひとまず無視しても、サムスン電子を世界的企業に育て上げたもう一つの要素は為替相場だ。同社は、現政権のウォン安政策で最大の利益を得た。

 李明博(イ・ミョンバク)政権が発足した2008年2月25日、ウォン相場は1ドル=949ウォンだった。ウォンは現在、当時より30%も下落した。ウォン安が即座に企業の増収につながるという保障はないが、売り上げの9割を海外収入が占めるサムスン電子の場合は、ウォン安により利益を確実に増やしている。同じ期間に円相場は対ドルで20%前後上昇した。つまり、日本のライバル企業に比べ、価格競争力が50%上昇したと言える。不動の要塞を築いたかのように見えた日本企業が青息吐息なのも無理はない。

 韓国の景気回復は、ウォン安政策のおかげだと信じる人が多い。しかし、ウォン安が長期間続けば、どのような不平等が生じるかについて、真剣に考えようとはしない。

 ウォン安政策が招いた最大の災禍は資金の偏りだ。サムスン電子、現代自動車、LG電子、現代重工業など輸出中心の大企業に市中資金が集中してしまった。このように資金が集中した結果、銀行や証券会社の法人営業担当社員が、輸出企業に高金利を払うと哀願し、資金を預けてもらうといった構図が繰り広げられている。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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