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社説:安保理議長声明 「北」の暴挙封じられるか

 割り切れない思いと不安が募る。韓国の哨戒艦沈没事件について、国連安全保障理事会は北朝鮮を事実上非難する議長声明を採択した。しかし北朝鮮の魚雷攻撃による撃沈だとは明示せず、名指しの非難や責任追及になっていない。この程度で北朝鮮の今後の暴挙を封じられるのか。はなはだ心もとない。

 議長声明は、46人の生命を奪った哨戒艦への「攻撃」に遺憾の意を表明し、「北朝鮮は沈没に責任があった」という多国籍調査団の結論に言及した後、改めて「攻撃を非難」している。

 これは北朝鮮の所業に対する非難と読める点で、先月の主要8カ国(G8)首脳会議の宣言と類似している。しかし事件とは無関係だという北朝鮮の主張に「留意する」といった記述もあり、G8のメンバーではない中国が安保理で粘り抜いた「成果」が歴然としている。

 それでも米国や日本は議長声明を肯定的に評価している。安保理に対し北朝鮮への名指し非難などを強く求めた韓国は、不満ではあるが一定の成果を得たと見て受け入れる姿勢だ。このあたりが安保理外交の限界なのだろうか。

 北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記は5月初めに訪中した際、中国首脳との会談で哨戒艦沈没事件とは「無関係だ」と断言したという。そう言われた以上、これを前提に北朝鮮をかばうしかないのが中朝関係の現実だと、中国側の弁明のような話が外交筋の間で流れている。

 その通りだとすれば、中国は北朝鮮の今後の行動について新たな責務を負ったと見るべきだ。魚雷攻撃に目をつむる形で北朝鮮を意図的に救ったなら、同種の暴挙が決して繰り返されないよう、強い影響力を行使するのが道理というものだろう。

 北朝鮮は哨戒艦沈没をめぐり韓国や米国を強く非難してきた。さらにG8を「味方なら肩を持つという悪習に染まった一味」と切り捨て、サミットでの菅直人首相の発言に関して「我々の気分を損ねる行動を続ければ日本が災いを被る」と脅した。こんな北朝鮮を中国がかばうばかりでは、大国としての責任を果たせまい。

 北朝鮮では昨年11月のデノミネーション(通貨呼称単位の変更)失敗以来、何かが成功し快調だという情報がほとんどない。そんな中で哨戒艦事件は起きた。

 さらに北朝鮮は、9月に労働党の「最高指導機関」選出のための党代表者会を開催すると予告した。何が起きるのか判然としないが、体制の将来を左右する大きな転換点にさしかかっているとの見方が有力だ。

 こういう時だけに不測の事態への十分な警戒が必要である。

毎日新聞 2010年7月10日 2時35分

 

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