狼の山の魂

狼山道院は野性界の寺です。狼の山から祈りを捧げます。
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狼山記

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狼の山の魂(332)「雷光」

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<2010年7月10日>

まだ梅雨が終わらない。

だが梅雨は、そんなに気にならない。

地に雨が必要だから雨が降るんだろうから、

雨が無ければ命が育まれないのだから、

それを想えば気にならなくなる。

梅雨期と言っても、この森は湿気が少ないから助かる。

さすがは標高1300mだ。

冬には猛烈な寒気に支配されるが、その反面、暑さや湿気とは無縁なのだ。

暑さや湿気は、我われからすれば寒気よりもはるかに杞憂な大問題なのだ。


夕方から雨になる日が多い。

雷を伴うことも多い。

だから晩の運動のときには雷雨のときが多い。

運動を一旦開始すれば、余程の豪雨で無ければ中断することはできない。

ほかの犬たちがじっと自分の順番を待っているので、それを想うと中断できない。

我が家の犬たちはみんな、雷であろうと大雨であろうと、全く意に介さないのだ。

雨の中を、雷鳴の中を、普段通りに躍動する。

稲妻が走る。雷鳴が轟く。

雷は、大自然の咆哮のように聞こえる。

大自然のスピリットの側面を、その荒々しい側面を感じるのだ。

大自然に隠された荒ぶる魂が、光となって音となって姿を現わす。

我われは、ずぶ濡れになりながら、雷雨の中をどんどん進む。

雷光と雷鳴の中で、大自然の大いなるエネルギーを戴きながら歩くのだ。

近くに落雷したこともある。物凄い衝撃だ。

だがその時も犬たちは取り乱さなかった。グッと踏ん張っていた。

動揺したところで危険を回避できる訳ではないし、逆にもっと窮地に追い込まれる。

私は犬たちにそれを教えてきたし、彼らは充分にそれを心得ているようだ。

雷光の瞬きに、エスキモードッグの「ライ:雷」を思い出す。

ライは生粋のポーラードッグだが、極地狼の血が色濃く入っていた。

彼は、まったく凄い犬だった。

胆の据わり方が尋常ではなかった。

彼はその生涯で3回くらいしか吠えたことが無かった。

しかもそれは威嚇の声ではなかった。

普段は、どこの何者が何十と来ようとも、ただ静かに見つめているだけだった。

どこからその揺るぎ無い自信と余裕が生まれてくるのか、不思議なくらいだった。

とにかくその豪胆は唖然とするほどだった。

普段は実に鷹揚だったが、だが一旦怒れば猛獣だった。

彼は一声も出さずに相手をその場にフリーズさせてしまうほどの威圧を放った。

その時の彼の無言の凄味に、背筋が凍るような思いをしたものだ。

それはまさに<LIGHTNIG BOLT>のように凄絶だったのだ。


天からライが、見守ってくれているのか・・・そんなように思える。

雷光と雷鳴の中を犬たちと進むとき、なぜか無性にそう思う。

「SPIRIT OF THE WILD」を垣間見せてくれた恩師ライ・・・・

狼の太郎の偉大な兄貴だったライ・・・・

ライ、今のみんなも、お前の教えを忘れていないよ!!!


■南無華厳 狼山道院■

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