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【緯度経度】日韓保守派の共通目標は

7月10日7時56分配信 産経新聞

 日韓の保守派の間では以前から「日韓の保守派連帯は可能か?」が折に触れ話題になってきた。

 冷戦時代は韓国がいわゆる“反共防波堤”になっていたため、その連帯は可能だった。ところが冷戦終結後、双方の民族感情がぶつかる歴史問題などで摩擦が表面化したため、あらためてそうした議論が出ているのだ。

 この問題で最近、興味深い出来事があった。

 韓国の代表的な保守団体「国民行動本部」などが先ごろ、日本の拉致問題関係団体とともに北朝鮮非難のビラ飛ばしをやった。ところがこの対北共闘に国内世論の一部が批判の声を上げ、徐貞甲・国民行動本部代表が反論した。徐代表は批判に対し次のように答えている(6月29日、平和放送インタビューから)。

 問い 日本の「救う会」の西岡力会長らとビラを飛ばしたが、彼は日本の極右というではないか?

 答え とんでもない。彼は20年前から日本人拉致問題を国際社会に訴えてきた北朝鮮人権問題の功労者だ。われわれの目的は金正日批判にある。目的が同じなら多少の違いはあっても連帯することが重要だ。

 問い 西岡氏は日本の歴史教科書歪曲(わいきょく)に関与するなど日本の代表的極右といわれているが。

 答え それは問題ではない。彼は日本人だ。日本人としての考えがあるだろう。彼にわが国の政策を強要するわけにはいかない。重要なことは、北の人権問題改善という目的で協力することだ。第二次大戦に際し、ナチス打倒のため連合国はソ連と手を結んだではないか。われわれも哨戒艦撃沈事件解決のために、中国に協力を求めているではないか。

 こうした「共通の目的に向けた連帯」という主張には早速、左派系のネットニュースなどが「目的が同じなら独島も明け渡す保守」などといった言いがかりをつけている。

 近年の韓国では「独島(日本名・竹島)」はいわば水戸黄門の「葵(あおい)の御紋の印籠(いんろう)」だ。「この紋所が目に入らぬかッ!」と取り出せば問答無用でみんなひれ伏す。だから「彼らは日本に独島を譲ろうとしている」と非難すれば、韓国ではたちまち支持を失うだろうという計算だ。

 日韓の保守派連帯には、韓国では必ずこうした世論だましが伴う。

 「独島」まで出されると韓国人としてはひるまざるをえない。韓国にとって保守派連帯の難しいところだが、「国民行動本部」など保守派団体は、その後も堂々と日本側擁護に出ている。たとえばこんな風に(7月1日の声明から)。

 「西岡氏を極右などと扇動する勢力は韓国の左翼だけだ。6・25対北風船飛ばしは“人類の敵”である金正日政権を終わらせ、北の2300万同胞を解放するためのものであり、これに賛同する日本の人権団体の参加は非難されるべきことではなく、むしろ歓迎されるべきことである」

 韓国の保守派が、竹島問題や歴史認識問題で日本に同調するはずはない。これは日本の保守派も同じだ。そこでお互い「小異を残し大同につく」でやろうというのだ。

 「国民行動本部」など韓国の保守派は、日本との間の領土問題など長年の懸案は「小異」として残し、北朝鮮糾弾という当面の「大同」では日本とも協力し合あうべきだと、世論を説得しているのだ。

 この日韓の「大同」論に対し韓国では、「独島」まで利用した非難などまだまだ抵抗はある。大手紙などマスコミ論調にもまだ登場しない。

 しかしこれまでと違って保守派が堂々と「大同」論で日韓協力を主張し、口当たりのいい反日・左翼民族主義に反撃しているのは、過去になかったことだ。

 日本の保守派には「竹島」を認めない限り北朝鮮糾弾で連帯はできない、などということはまったくない。日韓の保守派連帯に新しい局面が出ている。(ソウル・黒田勝弘)

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最終更新:7月10日7時56分

産経新聞

 

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