
3種類+1、ことなる個性。
それぞれに「おいしさ」がちがいます。
海苔は、4月から育成が始まります。
牡蛎の殻をつかって培養を始め、
夏の終り頃に、海苔のタネを網に定着させる
「採苗」(さいびょう)を行ないます。
その後、海に支柱を立てるか、
浮き流しで網を海中に広げて、
25枚から30枚かさねて「タネ網」を育てます。
この時期を「育苗」(いくびょう)といいます。

その後、重ねて張られていた網を減らし、1枚にして、
「単張り」と呼ばれる本格的な育成に入ります。
減らした網は冷凍され、
順番に育成されるのを待ちます。
同じ生産組合で、ほとんど同じような海で育っていても、
採苗、育苗、単張り、そして収穫の時期が
ほんのすこし異なることで、海苔の味は、変化します。
また、網がすぐ隣同士であっても、
水温、塩分、海流、栄養分の分布などの「海況」は、
場所によってほんのすこしずつ異なるため、
それも、味に変化をもたらします。
また、全体的に言えるのは、ことしの皿垣の海苔には、
(昨年にくらべて)穴が多いということ。
しかしそれは味には影響がありません。
ちなみに2008年は「秋芽の一番摘み」という、
いちばん最初に育て、収穫した海苔を、
2009年の「海大臣」は、5回目に入札が行われた、
「冷凍網の一番摘み」を。
そして2010年は、4回目に入札が行なわれた
「冷凍網の一番摘み」です。
海大臣(しお)も、同じ海苔を加工しました。
海況がいちばん整ったなかで育ったその時期の海苔が、
ほかの時期に出品された海苔にくらべて、
いちばん、香りと味がよかったからです。

相沢さんが候補に選んだ6種類のなかから、
ことしの「海大臣」は3種類。
そして、さらにもうひとつ、
うれしい新製品もできました。
「海大臣(みぎ)」は、線維がこまかい。
サクサク・さわやか・食材になじむ。

口に入れたとき、ほかのふたつにくらべて
すこしあっさりしている印象がありますが、
それは、ほんのすこし塩気がうすいから。
でも口のなかでモグモグしているうちに、
甘みと深みを感じてくる海苔です。
重さをはかると、ほんのすこしですが、軽め。
歯ごたえは「サクサク」した感じ。
線維はこまかくて、小穴は比較的多いほうです。
ほかのふたつよりも緑が濃く、そのため、
青のりのようなさわやかな印象もあります。
線維のこまかさゆえ、汁ものに入れたとき溶け切らず
うどんやそばなどにもからみやすい海苔。
主張がほかの2つにくらべて控えめですから、
納豆ごはん、卵かけごはん、
麦とろごはんなどにもぴったりですし、
チーズを使った料理、
たとえばピザやトーストなどとも相性がよさそうです。
「海大臣(まんなか)」は、強めの個性。
このまま食べても、とてもおいしい。

最初に口に入れたときのおどろきが
いちばん強いのが「まんなか」だと思います。
「まずは、そのまま何もつけずに食べてください」
と、いちばん言いたくなる海苔だとも言えます。
ほかの2つに比べて、塩気が強く感じられ、
また、うまみや深みもすぐに伝わってくる印象。
塩気、甘み、うまみ、先味、後味、
すべてにおいてバランスのいい海苔だと言えるでしょう。
全体に厚みがあって、しなやかですが、
折り曲げると「ぱりんっ」と一気に割れます。
大きめに切って、手巻き寿司に使うなど、
この海苔の個性を活かした使い方がよさそうです。
炊き立てのごはんにのせて、
しっとりとごはんの水分を吸って、
柔らかく溶けてしまうような感じ、
ごはんとうちとけてしまうような感じも、
ぜひ味わっていただきたいと思います。
また、日本酒や焼酎、白ワインのドライ、などの
お酒のおつまみとしても合いそうですよ。
初年度の「海大臣」を覚えていらっしゃるかたは、
あの海苔が帰ってきたと思っていただいて
よいかもしれません。
おせんべみたいにサクッとうまい。
「海大臣(ひだり)」は、歯ごたえ重視。

噛むと、バリバリッとした強い歯ごたえを感じ、
3つのなかでいちばんしっかりした印象が「ひだり」。
すこし小穴や濃淡もありますが、
全体的には厚手の印象です。
見た目も密なら、食べたあとの印象も濃い。
食べ終わったあとも、海苔らしい風味が、
後味としてのこります。
試食のときの共通の意見は
「これが、いちばん、塩むすびに合う!」
というものでした。
にぎりたてのおむすびに巻いて、
ぱりっとした食感を楽しんでくださいね。
また。焼いた餅や、ホタテなどを焼いて、
しょうゆをつけたものを、この海苔にのせても
とってもおいしくいただけそうですよ。
生産量のすくない、おいしい海苔を集めて加工。
「海大臣(しお)」。はじめての、味付け海苔です。

「海大臣」候補でありながら
生産量がすくないため、採用しなかった海苔を集めて、
林屋海苔店で味付け加工をしました。
味付け海苔は一般的に
「あまじょっぱい」ものが多いと思いますが、
これはすっきりとした「しお味」です。
韓国の味付け海苔にも近い印象ですが、
ごま油ではなく、コーン油を使っています。
林屋海苔店では、海から捕ってきて板状にするときに
すこし破れてしまった等級の海苔
(「ヤブレ、ハズシ」と呼ぶそうです)に味をつけ、
カットして販売することはありましたが、
このように、完品である焼き海苔をまるごと
味付けして販売するのははじめてのことだそうです。

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