きょうの社説 2010年7月10日

◎本州縦断観光 空港の広域連携の先駆けに
 小松、富山、静岡の3空港を連携させた本州縦断の旅行商品の売り込みに、関係自治体 が本腰を入れて取り組むことになった。地方空港同士の広域連携の先駆けとして定着、発展するよう望みたい。

 大手航空会社が赤字の地方路線廃止に動き、新幹線との競争も激しさを増すなか、地方 空港の生き残り策として、空港同士の広域連携を模索する動きが全国的に強まっている。石川、富山、長野、山梨、静岡の5県と中部運輸局でつくる「本州縦断ルートプロモーション事業実行委員会」も、小松または富山空港から入国し、5県の観光地を巡って静岡空港から出国する「小松(富山)イン静岡アウト」と、その逆コースの「静岡イン小松(富山)アウト」の旅行商品を、それぞれソウル定期便が就航している韓国に提案する。

 企画された5泊6日の旅の巡回ポイントは、兼六園や立山黒部アルペンルート、松本城 など日本を代表する観光地ばかりであり、3空港連携の定番旅行商品として、海外への売り込みに力を入れる価値は大いにある。

 赤字路線の廃止、減便に危機感を深める地方空港にとって、こうした広域連携の強化は 空港経営の必然的な流れともいえる。たとえば、徳島県と鳥取県はことし、滑走路を延長した「徳島阿波おどり空港」と米子空港の利用者増を図るため、海外チャーター便を共同運航する事業に取り組んでいる。

 また、将来的に一つの空港だけで存続するのは難しいとして、空港経営一体化の呼びか けが関西や東北でなされているほか、ブロック内の空港経営について、複数の自治体の共同起債による整備といった提言も行われている。

 さらに、商社が地方空港を利用してチャーター便事業に乗り出す新しい動きも本格化し ている。成田や関空などを経由しない海外旅行の需要を地方で掘り起こす狙いである。こうした地方空港活用のアイデアの競い合いは、今後ますます強まるだろう。

 小松、能登、富山の3空港を抱える石川、富山県にとって、連携は空港経営の大きな鍵 であり、さらに知恵を絞ってほしい。

◎分散飼育半年 石川にもトキ2世残して
 いしかわ動物園(能美市)でトキの分散飼育が始まって半年が経過し、その間、誕生後 に死んだ1羽を含めて9羽のふ化に成功した。受け入れ表明以来培ってきた飼育繁殖技術や環境の整備が実ったといえる。佐渡市では放鳥トキによる自然界でのひなの誕生が持ち越しとなったり、鳥舎のトキがテンに襲われて死亡するなどしたが、国のトキ野生化プロジェクトは全体で見れば前進したといえ、一翼を担う石川県が果たす役割は大きい。

 今年の上半期を振り返ると、石川県ではトキの移送から産卵、ひなの誕生や加賀、能登 への40年ぶりの飛来などトキにまつわる明るい話題が多かった。トキへの関心の高まりは、大人から子供までがふるさとの自然を考えるきっかけになったのではないか。

 ひなは順次巣立っているが、分散飼育で産まれたトキは原則、成長した段階で佐渡トキ 保護センターに返すことになっている。ただ、先に分散飼育を行っている多摩動物公園では例外的に3羽を飼育しており、県も飼育継続を求めている。環境省は秋ごろに開く飼育繁殖専門家会合で、石川で産まれたひなの扱いを決める方針であるが、ぜひ石川にもトキの2世を残してもらいたい。感染症予防とともに本州最後の生息地である石川で産まれたトキが常時いることによって、人と自然の共生を考える機運がさらに高まり、トキの復活を後押しすることになるだろう。

 いしかわ動物園では、成功すれば佐渡トキ保護センターに次いで国内2例目となるひな の自然繁殖も試みた。これは誕生には至らなかったものの、初めての繁殖期はトキ飼育の実践の場として、貴重なノウハウを得ることができたであろう。日々の管理に万全を期して飼育技術の一層の向上につなげてもらいたい。また、トキ飼育の成果と意義を県民に分かりやすく伝える工夫も重ねてほしい。

 能美市がトキを生かしたまちづくりを推進したり、高校や地域のトキ保護のボランティ ア活動の取り組みも広がっている。将来の石川での放鳥の夢も抱きながら、トキの成長を見守っていきたい。