「ワクチン拒否」きょう勧告期限 特例国認めず

(2010年7月6日付)

 口蹄疫ワクチンの接種を拒否している高鍋町の農場経営者に対して県が行った家畜の殺処分勧告は6日に期限を迎える。東国原知事は5日、記者団に「歩み寄る折衷案を模索している。案が成立するなら数日後に分かる。法律を問答無用で適用するのは避けたい」と、柔軟に対応する考えを示した。

 勧告を受けたのは民間種牛6頭を飼育する男性で、口蹄疫対策特別措置法に基づく初めてのケース。東国原知事は「民間農場と農林水産省の意向に沿うような、折衷案を模索しているが難しい」と明かした。農政水産部の幹部も「もう少し時間をかけたい」と語るなど、勧告期限までの問題解決にこだわらない姿勢を見せる。

 問題を複雑にしている背景には、県が県家畜改良事業団(高鍋町)で飼育していたエース級の種雄牛6頭を特例で避難させた事情がある。移動制限区域内の同事業団から西都市へ避難させ、うち1頭に感染疑いが出た後も、残り5頭は遺伝子検査や抗体検査で陰性を確認して処分を回避している。

 男性は県内で唯一、民間で種牛を育成。人工授精用精液ストローも繁殖農家に供給しており、「県は2度も特例措置を行っている。国、県には平等な対応を求めたい」として特例適用を訴える。

 児湯地域で家畜の移動・搬出制限が解除可能になるのは16日だが、国はこの農場の処分が終わらない限りは解除しない方針。山田正彦農相は5日、記者団に「(ワクチン接種)農家は大変な覚悟で犠牲を払っている。自分たちだけというわけにはいかないだろう」と述べ、あらためて特例は認めない考えを示した。

 特例を認めれば、ワクチン接種に応じた農家の反発が予想される。口蹄疫が農家間の溝を生む火種にもなりかねず、県は難しい判断を迫られている。