宮崎県は22日、家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」の感染回避のため、特例措置で避難させていた宮崎牛などのブランド牛の種牛6頭のうち1頭に感染の疑いがあると発表した。6頭の中で最も精液の需要が高いエースの「忠富士(ただふじ)」で、殺処分した。
家畜伝染病予防法などでは、同じ敷地内で飼育されている5頭も殺処分の対象となるが、全国の和牛産地にその子牛を供給する宮崎の種牛の貴重性から、県は農林水産省と協議の上、当面経過観察することを決めた。県家畜改良事業団が供給している精液の9割はこの6頭で賄っており、5頭に感染の疑いが出て殺処分となった場合は、畜産王国・宮崎は大きな危機を迎える。
忠富士など6頭は、高鍋町の事業団で飼育されていたが、感染発生地が約2キロまで迫ったため、13日に約20キロ離れた西都市の山奥に避難させていた。だが、翌14日に事業団で飼育していた肥育牛に感染の疑いが判明、6頭への感染が懸念されていた。
県は移動前の遺伝子検査で6頭とも感染の疑いはないとしていた。忠富士から19日に採取した検体を検査したところ、陽性反応が出たため、さらに20日に再検査。陽性反応を確認した。
忠富士は2002年生まれの7歳。約22万頭の子牛を生み出した伝説の種牛「安平(やすひら)」の孫牛。忠富士の精液で生まれた肉牛は、肉質等級(2-5等級)のうち上位の4、5等級を占める割合が、他の牛に比べて高く、事業団が供給している精液の約4分の1を占める。
=2010/05/23付 西日本新聞朝刊=