2日連続で出げいこを行った白鵬(左)=名古屋市西区の陸奥部屋宿舎で(高橋雅人撮影)
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日本相撲協会が名古屋場所で優勝力士の外部表彰を辞退すると発表したことを受けて、横綱白鵬=宮城野部屋=が8日、出げいこ先の陸奥部屋で取材に応じ「あまりにもやり過ぎじゃないかという考えもあります。自分たちの手で国技をつぶす気なのかと思います」と疑問を投げかけた。貴乃花理事は、こうした現役力士の不満も踏まえて「場所に向けてけいこに精進するべき」と、3日後からの場所への集中を促した。
最高位の横綱としての発言の重みは十分にわきまえている。それでも、いや、だからこそ全力士を代表して言いたかった。出げいこ終了後に、天皇賜杯の辞退について報道陣に問われた白鵬は思いのたけを吐き出した。「われわれ全力士、また私自身も天皇賜杯をいただくために一生懸命けいこに励んで、日々努力してますので、心から残念に思います。日本の横綱として、あまりにもやり過ぎじゃないかという考えはあります」
現役力士による協会批判とも取られかねない発言。しかし、横綱は堂々としていた。モンゴル出身ながら「日本の横綱として」と自身の立場を明確にしたのも強い意志の表れだった。
6日にはNHKが名古屋場所の生中継中止を決定。母国モンゴルでも残念がる声が上がった。追い打ちをかけるような「表彰辞退」の発表。幕内最高優勝に贈られる天皇賜杯は角界の最高権威。現役最多の14度の優勝を誇る白鵬は誰よりも、その重みを理解する。2日連続でショックを受け、割り切れない思いが強く残ったのだろう。
「全国、世界中に楽しみにしてる方がいますから。日本だけの問題じゃなくなっている。自分たちの手で国技をつぶす気なのかと思います。そう思いませんか」。先行きを心配し、報道陣にも同意を求めた。
名古屋場所では年6場所制となった1958年以降では初の3場所連続全勝優勝がかかる。この日のけいこでは新小結白馬、幕下霧の若を相手に21番取り全勝。前日よりも前に出る取り口が目立ち、調子が上向きなことを感じさせた。
「気持ちを切らさずにやるしかない。千秋楽まで取りきって、結果が良ければ一番いい」。抱負を改めて問われて相撲に集中する構えを強調した。初日まであと3日。喧騒(けんそう)はまったく収まる気配を見せない。発言しただけの責任は土俵で取る。そんな強い決意が横綱からにじんでいた。 (高橋雅人)
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