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【口蹄疫】種牛感染疑い「日本の畜産だめになる」…全国のブランド牛に打撃
口蹄(こうてい)疫の感染拡大は、全国的に評価の高い宮崎の子牛を生み出してきた種牛にもおよんでいる。子牛は全国で肥育され、三重「松阪牛」など各地のブランドを背負って流通している。仮に血統が絶えることになれば、県内だけでなく全国のブランド牛に与える影響は大きい。
(高橋裕子)
宮崎県では、県家畜改良事業団で「宮崎牛」の種牛を管理し、県内の生産農家のみに試験管入りの冷凍精液を販売している。農家は人工授精でできた子牛を全国に出荷し、飼育期間が最も長い地域が産地となる。
ブランド牛はそれぞれに条件があるが、松阪牛の場合、松阪市など指定地域での飼育が最終、最長であること。松阪牛の子牛のルーツの4割は宮崎産だ。
冷凍精液は1年分の在庫があり、誕生から出荷までは2年以上かかることから、すぐに松阪牛が品薄になったり、価格が高騰することはない。だが、競りの中止で宮崎県から新たな子牛が入らなくなっているため、将来的には価格に影響してくる可能性がある。
感染の疑いが判明した「忠(ただ)富士」を惜しむ声も多い。三重県松阪市の瀬古食品の社長、瀬古清史さん(61)は「忠富士の子牛は肉質が良く、健康で育てやすい。3拍子も4拍子もそろっていた」と嘆く。飼育する松阪牛約500頭のうち200頭ほどの父親が忠富士だ。
宮崎県畜産課によると、忠富士は事業団の冷凍精液のうち2割の3万本を担い、人気も高いが値段も1本4千〜5千円と高値。単純計算で年間1億以上を稼ぐ上に、子牛がブランド牛に育つとなると「値段が付けられないほど価値が高い」という。
種牛は長い年月をかけ、良い血統同士をかけあわせてつくられた特別な牛だ。種牛だけでなくその子牛の質を見極めた上で種牛と認定されるため、新しい種牛をつくるには少なくとも7年はかかる。事業団が育成中だった次世代を担う種牛候補もすべて殺処分対象となっている。瀬古さんは「早く終息しないと日本の畜産がだめになってしまう」と話している。