21日、宮崎県西都市の農場で新たに家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」の感染症状を示した牛がいることが判明し、日向灘沿いに集中していた感染地が西へ広がる懸念が出てきた。同市は、国内で初めて行うワクチンによる感染拡大防御網づくりの最前線と位置付けられていたこともあり、事態の推移次第では実施計画にも影響が及びかねない。「覚悟はしていたが…」。市の対策本部長を務める橋田和実市長は唇をかんだ。
今回の農場は、感染発生が続いている高鍋町や新富町との境に近い、市の東端地域。この農場から2キロほど離れた場所で繁殖牛を飼っている農家男性(79)は「自分のところも時間の問題。死刑宣告を受けたような気持ちだ」と、落胆した様子で話した。
政府が感染拡大防止の切り札として打ち出したワクチン接種は、発生が著しい都農、川南、高鍋、新富の4町を取り囲む未発生地域から、中心部へと包囲網を狭めるように進める実施計画が検討されている。
同市は出発点の一つと見込まれ、「ワクチンの必要性は認めざるを得ない。ゆくゆくは殺処分しなければならなくなるので、埋却場所探しを始めていた」(橋田市長)という。ただ市自体が感染地域となる可能性が高まった展開に「いよいよ来たか、という感じ」と疲れた表情を浮かべた。
同市で感染疑いが確認されれば、ワクチンを用いる移動制限区域圏の設定にも影響が及ぶ。県の担当者は「そうなれば範囲拡大も当然、検討しなければならない」と話した。
=2010/05/22付 西日本新聞朝刊=