輸送激減先見えず 物流業界に広がる影響

(2010年7月9日付)

 口蹄疫の影響は県内の物流業界にも広がっている。牛、豚の大量殺処分で、食肉や飼料など畜産関係の輸送は激減。風評被害も重なり、「積み荷回復」への道筋は見えない。「県内畜産が復興するまで経営が持つか」「口蹄疫が終息しても風評は終わらない」。関係者は影響の長期化を懸念している。

 家畜や食肉を運ぶ都城市の中央運送には、5月の大型連休前後を境に、県外の飼料会社から「宮崎ナンバーの車は遠慮して」との声が寄せられるようになった。発注は減り、4〜6月の売り上げは前年同期の半分に落ちた。

 苦肉の策として今月、東大阪市に営業所を設置。内村勉社長(60)は「宮崎ナンバーの出入りを断られたらどうしようもない。長引けば長引くほど経営は厳しくなる」と窮状を訴える。

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 県トラック協会が6月9〜15日、加盟425社に実施したアンケートによると、口蹄疫の影響について63社が「非常に大きい」と回答。宮崎県産を理由に青果物や工業製品の輸送をキャンセルされたり、出荷物の受け取りを拒否されたとの報告もあり、全体の2割が、昨年同期(4〜6月)より売り上げが5割以上減ったと答えた。

 さらに3割の事業所が融資を必要としており、同協会の野中秋芳専務理事は「業界の大半は中小零細企業で、経営が成り立たなくなる社も出ている。運転資金貸し付けの条件を緩和してほしい」と話す。

 海運への影響も大きい。宮崎カーフェリー(宮崎市)は4〜6月、食肉の貨物量が1千万円分減少。「なるべく鹿児島から運びたい」との荷主の意向を受け、牛乳の取り扱いは半減。ジャガイモ600万円分の取引が中止になるなど、損失は6200万円に膨らんだ。加々美隆営業本部長は「荷主に言われたら応じるしかない。終息宣言が出ても貨物が戻ってくるかどうか」と先行きの不安を口にする。

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 牛の餌を輸入販売する日向市の運送業者は、防疫の強化で難局打開を目指す。農場に出入りするたびに消毒を徹底。県南へは熊本、鹿児島回りで、県北へは福岡方面から入る。遠回りすればするほど、燃料費や高速料の負担は増えていく。

 「農家が家畜を導入し、軌道に乗るまでに5年はかかる。その間、どうやって耐えればいいのか。これまでも苦労はあったが、これから先の方が不安は大きい」。非常事態宣言が一部解除された今も、光は見えない。

【写真】口蹄疫の影響に苦しむ物流業界。宮崎ナンバーというだけで取り引きを拒否されるといった風評被害も続いている