種牛、無償提供で県有 国に処分回避要請へ

(2010年7月9日付)

 口蹄疫対策で県の殺処分勧告を民間種雄牛農場が拒否している問題で、東国原知事は8日、高鍋町の農場経営者薦田(こもだ)長久さん(72)を訪ね、事態の打開策を話し合った。

 薦田さんは自身の種雄牛6頭を県に無償提供する意向を伝え、知事も「県有」として国に処分回避の特例適用を求めていく方針を示し、双方がおおむね合意した。ただ、国は殺処分方針を崩しておらず、事態収拾は今後、県と国との協議に委ねられる。

 県有化の案は同日の話し合いで浮上。薦田さんは「(種雄牛を)生かすことが大事で、方法は二の次。県が管理するかは任せる」と、東国原知事に伝えたという。

 話し合いの後、県庁に戻った知事は記者団に対し、「無償譲渡という形になるのでは。(薦田さんに)補償金が入らないことで(勧告を拒否した)ペナルティーの意味にもなる」と語り、ワクチン接種・殺処分を受け入れた農家との平等性も、ある程度は担保できるとの見方を説明した。

 薦田さんの種雄牛6頭について、知事は安全確認のための抗体検査も国に求める意向。16日が見込まれている児湯地域の移動・搬出制限区域解除に間に合わせるため、国との結論は週内を目指す。

 薦田さんは本紙の取材に対し、「命を残し、世の中に貢献することが最も重要なので無償提供でもいい」として、対応を県に一任する考え。それでも国が認めず殺処分に踏み切るなら「体を張って守る。やはり(勧告取り消しの)提訴をするしかない」と話した。

 県の種雄牛をめぐっては、口蹄疫の感染が拡大していた5月、県家畜改良事業団(高鍋町)の種雄牛6頭を特例で避難させた経緯がある。その後、うち1頭が発症して処分された後も、5頭は抗体検査で安全を確認するなどして処分を回避した。薦田さんは自身の種雄牛も「本県の畜産再興に役立てたい」と同様の特例を求めていた。