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社説

ゆうパック 混乱の責任 はっきりと 7月7日(水)

 夕方出しても、だいたいは翌日に届く。配送中の荷物の在りかもインターネットで追跡できる。

 宅配便は、便利な時代になったと実感させる代表的なサービスである。

 その業界で、一角を担うはずの新生「ゆうパック」が出足からつまずいた。

 中元シーズンの最中に大規模な遅配を招き、多方面に迷惑をかけている。商品価値を失った生鮮品が少なくない。メロンやサクランボは熟れすぎたり傷んだりした。影響は深刻だ。

 混乱が起きたのに、公表が遅れたことも問題だった。利用者は早く事情が分かれば、他の業者を通じて送り直しもできたはずだ。

 新たな宅配便事業は、日本郵政グループの郵便事業会社が、日本通運の「ペリカン便」を買収し、自前のゆうパックに統合して、この1日からスタートさせた。

 ところが、現場の職員が新しいシステムに習熟していなかったために、集配の遅れが各地で起き、混乱が広がった。

 現場では、トラブルはある程度予想されていたようだ。各支店では新しい機器の使い方を訓練する機会が少なかった。本社からの指示も不十分だったという。

 社内には、繁忙期の統合は避けた方がいい、との異論が出ていた。こうした声は経営陣に届かなかったのだろうか。当初の計画にこだわり、準備不足のまま見切り発車させたとすれば残念だ。

 事業統合は日本郵政の斎藤次郎社長と、郵便事業の鍋倉真一社長が指揮を執った。ともに官僚の出身。民営化見直しを掲げた国民新党の亀井静香代表の肝いりで就任している。

 それまでは西川善文・前日本郵政社長が主導し、日本通運と共同出資の形で統合を進めていた。

 新体制は“西川路線”を転換し、すべてを郵便事業が引き受けた。取扱量を増やして業務の効率化を図る狙いだったが、赤字を止めようと急ぎすぎた。

 宅配便業界はヤマト運輸、佐川急便の2社で4分の3のシェアを占める。3番手のゆうパックは苦しい競争を強いられている。

 信用が傷ついたゆうパックの打撃は大きい。経営陣は混乱を一過性のことと軽視せず、責任の所在をはっきりさせるべきだ。社内の意思疎通、トップの判断は適切だったのか、検証が必要だ。

 民営化の見直しで、国が日本郵政の大株主としてとどまる。事業の失敗は、国民負担につながりかねない。経営陣の責任は重大だ。

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