(英エコノミスト誌 2010年7月3日号)
景気を順調に回復させるには、企業はカネを貯め込むのをやめなければならない。
折しも各国政府が借り入れの縮小を図ろうとしている時に、民間部門がこのまま熱心に貯蓄を続けていけば、景気が二番底に陥るリスクが高まる。クレジット(信用)に依存した暮らしをした結果、消費者が多額の債務を抱えている先進国では、家計の貯蓄率が長期間にわたって高水準にとどまるのは間違いなさそうだ。
しかし、民間部門による最近の貯蓄増加の大部分は、消費者ではなく、企業によるものである。多くの先進諸国では、企業は支出を十二分に賄える利益を上げており、その結果生まれた余剰資金が企業内部に蓄えられている。この傾向が続くかどうかが、今後に大きく影響してくる。
景気の先行きを大きく左右する企業行動
もし用心深い企業が貯蓄をさらに積み増すなら、景気回復の見通しは暗い。各国経済は企業の余剰資金が政府の財政赤字を埋めるという、現在の奇妙な構造から抜け出すことができないだろう。一方で、企業が財布の紐を緩めて労働者を採用したり投資したりすれば、政府にも債務を圧縮する余地が生まれるはずだ。
企業の内部留保の度合いは国によって異なる。英国は企業が最大級の貯蓄を抱えている国の1つだ。英国企業は昨年、GDP(国内総生産)の8%に上る貯蓄超過を記録しており、そのほとんどが非金融法人によるものだった(図1参照)。
民間部門によるこの貯蓄超過が、GDP比11%に上る英国政府の財政赤字の大部分を相殺した。残りは、1%の経常赤字改善と2%の家計部門の貯蓄超過が埋めた。
英国企業ほどには倹しくないものの、米国企業も内部留保を貯め込んでいる。米連邦準備理事会(FRB)の「ファイナンシングギャップ(資金差額)」の推計によると、企業の支出に対する収入の不足分は2009年にはGDP比でマイナス0.8%(つまり貯蓄超過)だった。ただし、2010年第1四半期にはこのギャップは狭まった。
欧州の指標と同じように、海外子会社の内部留保まで含めると、米国企業の資金余剰はさらに拡大する。
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