不動産のわなにはまった韓国社会(上)

 昨年9月、京畿道安養市で売れ残りマンションを4億4000万ウォン(約3200万円)で購入する契約を結んだKさん(34)は、入居予定時期から2カ月が過ぎたが、これまで住んでいたアパートが売れず、新居に入居できずにいる。このため、入居遅延手数料として毎月90万ウォン(約6万6000円)を支払う羽目となった。Kさんは「生活が苦しい中、90万ウォンという大金を無駄に支出しなければならなくなり気が狂いそうだ。夫婦で対策を話し合っても、互いに気分を損ねるばかりだ」と嘆いた。

 Kさんが購入したマンションの価格は4000万ウォン(約290万円)ほど下落した。これまで住んでいた公団アパートは、昨年末よりも値段を5000万ウォン(約370万円)下げて、2億2000万ウォン(約1610万円)で不動産仲介業者を通じて売りに出しているが、問い合わせは全くない。本人の責任ということは分かっているが、政府に対する不満も大きい。Kさんは「政府は昨年、売れ残りマンションを購入すれば、不動産譲渡税を軽減するとどれだけ騒いでいたことか。政府は国民に売れ残りマンションを買わせておきながら、今になって知らん振りをしている」と話した。

 今年初めから始まった住宅取引の低迷は、深刻な社会問題となりつつある。住宅の売買取引が成立せず、入居が遅れれば、建設会社だけが苦境に立たされるわけではない。マイホームを夢見た平凡な勤労者までもが破産の危機に陥っている。政府は今年4月、住宅取引の活性化策を発表したが、効果は得られず、状況はさらに悪化する可能性がある。不動産情報会社「スピードバンク」によると、首都圏で上半期の入居時期を迎えた物件は6万4491戸だったが、下半期には約1万2000戸多い7万7157戸に達する。

住宅取引低迷で家庭崩壊も

 入居時期が迫った物件の購入者からは悲鳴が上がっている。ソウル市蘆原区中渓洞に住む主婦Aさん(47)は2年前、京畿道高陽市食寺地区で売れ残りマンションを購入した。Aさんは「夫に内緒で6億ウォン(約4400万円)のマンションを契約金3000万ウォン(約220万円)で購入したが、1年で価格が1億ウォン(約730万円)も暴落した。夫は酒を飲んで帰宅するたびに、『苦労して稼いだカネを無駄遣いするなんて、ただではおかない』とわめき散らす」と話した。

 専門家は住宅取引問題が社会問題化している背景について、住宅を購入するのに全財産をつぎ込まなければならない韓国社会の特徴に原因があると分析する。

 住宅産業研究院の南熙竜(ナム・ヒヨン)院長は、「韓国の中産階級は過去に稼いだ資金だけでなく、今後5-6年に稼ぐ資金の分までローンを借り入れ、住宅購入に費やしている。住宅取引が低迷し、価格下落ペースが速まれば、個人では資金のやり繰りが困難になる」と警告した。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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