東京商工リサーチは、8日、「上半期(1月~6月)建設業の倒産」(負債額1000万円以上)を発表した。
全国の倒産件数は前年同期比16.7%減(352減)の1748件にとどまり、上半期としては1994年(1611件)以来の低水準となった。
負債総額は同50.4%減(2842億8800万円減)の2788億2500万円。91年以来、19年ぶりに3000億円を下回った。前年同期に73件発生した負債総額10億円以上の大型倒産は、「エービー産業」(大阪府、負債額234億円、特別清算)など33件に減少。平均負債額は同40.6%減の1億5900万円となった。
業種別では、土木工事業(舗装工事業を除く)405件、建築工事業(木造建築工事業を除く)314件、床・内装工事業148件、管工事業(さく井工事業を除く)144件、その他の職別工事業130件が上位となり、この5業種で全体の65.3%を占めた。
倒産原因は、販売不振(受注不振)が最多の1295件。以下、既往のシワ寄せ(赤字累積)198件、過小資本113件、他社倒産の余波65件、放漫経営42件、その他(偶発的原因)14件、信用性低下、売掛金回収難各8件、設備投資過大4件、在庫状態悪化1件と続いた。倒産形態の内訳は、消滅型(破産、特別清算)が1187件、私的倒産(銀行取引停止、内整理)507件、再建型(民事再生法)54件だった。
地区別の倒産件数は、中部(223件、同8.2%増)を除く8地区で減少した。減少率が最も高かったのは、北海道(74件、同39.3%減)。以下、九州(154件、同30.9%減)、東北(102件、同22.1%減)、四国(68件、同20.9%減)、北陸(61件、同18.6%減)、近畿(434件、同18.5%減)、中国(79件、同17.7%減)、関東(553件、同11.9%減)の順。
同社は今後の動静を次のように観測している。
「建設業倒産は、依然として中小企業向けの金融支援である『景気対応緊急保証制度』や、金融機関に借入金の返済猶予を促す『中小企業金融円滑化法』の施行が倒産を抑制している。しかし、こうした倒産の減少が、景気の自律的回復に伴うものでないため、決して楽観できる状況にはない」
「原因別では、受注不振(販売不振)が前年同期比6.9%減1295件ながら、上半期倒産の構成比が同7.8ポイント上昇の74.0%(前年同期66.2%)となり、全体の7割を占めて厳しい経営実態を反映した。今年度の公共事業関係予算が前年度比18.3%減の大幅減となるなかで、その影響がいつごろ表れるのか先行きの不透明感は増している。政策効果による倒産抑制をいつまで持続できるのか、今後の動静を注視する必要がある」
6月単月の倒産件数は、前年同月比18.5%減(72件減)の317件。負債総額も同56.1%減(609億9100万円減)の476億4400万円だった。(文・東)
東京商工リサーチ
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