全国がサッカー日本代表の活躍の余韻にまだ浸っている気がしますが、私たちのエリアには、今この時も、サッカー以外のスポーツに夢中になっている子どもたちがいます。
ご紹介するのはラグビーに打ち込む中学生、しかも、女の子です。
福岡県うきは市の「浮羽ヤングラガーズ」。
幼稚園児から中学生までの90人が週末、練習に集まります。
体と体がぶつかり合うグラウンドに、普通のラグビーチームでは聞き慣れない、ひと際、かん高い声が響いています。
男子に混じって駆け回る5人の女の子。
練習内容は男子とまったく同じです。
●女子のメンバー
「試合に出るのは楽しいし、みんなとラグビーできるのが楽しい」
●浮羽ヤングラガーズ・上原真澄コーチ
「ラグビーやってるときは、男子とか女子とか分けていない」
中学3年生の碓井可奈さん。
チームの副キャプテンを務めています。
体が一回り以上も大きな男子に物怖じせず体当たりする度胸が持ち味です。
大学までラグビーをしていた後藤記者が、可奈さんのタックルを受けてみることに…。
●倒された後藤記者
「女の子と思ってなめてました。イタッ」
そのプレーでチームを引っ張る可奈さんですが、精神的な柱でもあります。
●浮羽ヤングラガーズのキャプテン
「気持ちは男子以上、力を発揮したりとか、僕たちが沈んだときに元気つけてくれるプレーとか声出しとかをしてくれて、支えてもらっている」
●上原コーチ
「女性だけど、気持ちを前面に出して、みんなを引っ張っていってくれる存在」
そんな可奈さんも、ジャージを脱げばごく普通の中学生。
グラウンドでの表情とは一変、友達との何気ない会話に屈託のない笑顔を覗かせます。
生徒会の役員も務める可奈さんは、学校でもクラスメートから頼られる存在です。
●同級生
「可奈ちゃんなんでもできるもんね、勉強とかスポーツとか、絵もうまいし、おまけに回りは全部男子だし、ラグビー大好きって感じ」
週末の練習だけでは飽き足りず、学校から帰るとすぐにボールに飛びつきます。
相手を買って出るのは、一度もラグビーをしたことがないお父さんです。
●父親・碓井通生さん
「親としては、一緒に遊んでもらっている感じ、この子たちがしてるのを見ると、転ばないというより、転んでも立ち上がるっていう、コーチや先輩たちがこの子たちに教えてくれるから、ものすごくいいんじゃないかって」
可奈さんの兄・廉さんは、全国大会の常連校、佐賀工業高校でラグビー部のレギュラーです。
中学までは、浮羽ヤングラガーズの一員でした。
一方、姉の真央さんは高校時代、ラグビー部のマネージャー。
そして、可奈さんがラグビーを始めたのは小学2年生のとき。
お兄さんの練習を見に行ったのがきっかけでした。
●可奈さんと両親のやり取り
可奈「お母さんが行けって言ったの覚えとる?」
母「いつ?」
可奈「あんた行かんねって言ったの覚えとる」
父「行きたかったと?」
可奈「多分、いやいや」
●可奈さん
「なかなか、男の輪に入るのも少し抵抗もあるし、コミュニケーションがとれないこともありました。でも逆に、任せたよとか言われた時は嬉しいですね」
●父・通生さん
「試合中に、大きな相手にタックル入れて、跳ね飛ばされて救急車に運ばれたことがあるんですよ。初めてラグビーで泣きよったんですよ。こいつもうだめかな、よほど辛かったのかなと思って聞いたら、試合に出れなくて泣いとったって言うんですよ。危ないからやめろなんて言えない雰囲気ですね」
先月、開催された九州ジュニアラグビーの福岡予選。
可奈さんたち女の子5人は、激しいコンタクトプレーで男子と互角に渡り合います。
でも、チームは3戦全敗で、九州大会に駒を進めることはできませんでした。
今月、開催されるリーグ戦で、浮羽ヤングラガーズを卒業する可奈さん。
別のクラブチームに入って今後もラグビーを続けます。
目標は日本代表の「桜のジャージ」。
4年ごとに開催されている、女子のワールドカップで代表に選ばれることです。
●可奈さんインタ
「いつか、桜のジャージを着て日の丸を背負いたいです」
次の女子ワールドカップは2014年。
日の丸を胸に、楕円球を追う自らの姿を夢見て、可奈さんの胸はすでに熱くなっています。