社説

参院選 政治改革/定数削減も結構だけれど

 議員定数削減を中心とした政治改革が参院選の“隠れた争点”に浮上している。国民新党を除く各党がマニフェスト(政権公約)に盛り込んだためだ。
 民主党は「衆院比例80、参院定数40程度削減」を、自民党は「衆参の定数を3年後に1割、6年後に3割削減」を掲げる。
 中小政党も、リストラにあえぎ、暮らし向きの改善が思うに任せない市民の目線が気になる。みんなの党は「衆院180、参院142削減」、たちあがれ日本は「衆院80、参院42削減」、新党改革は「衆参両院の半減」をうたう。
 比例が命綱の公明、共産、社民3党は選挙制度の見直しに言及。公明は「衆院は新しい中選挙区制、参院は民意を反映した制度導入」を条件に「削減」とし、社民も「比例代表中心の制度」を掲げる。「比例削減に反対」としつつ、新制度との絡みで定数全体には含みを残す。共産は「削減反対、1票の格差是正」「小選挙区制の廃止、比例代表制の導入」を主張する。
 民主、自民の二大政党、新党を中心に、有権者に「身を切る」覚悟を目いっぱい強調してみせた格好だが、コストに見合った働きをしていない無駄の多さを自ら認めたようなもの。国会の権威が揺らぐ。
 もっとも、民主党の衆院比例を除いて、削減の対象を示しておらず、公約は具体性を欠く。党内議論を尽くしたようにも、契約履行の確かな見通しを持っているようにも見えない。
 コスト削減は歳費の見直しや議員活動に付随する経費の「事業仕分け」でも生み出せる。そもそも、政治改革を訴えるのであれば、定数削減と同時に国会の質、すなわち議員の質を高め、審議の充実を図る方策こそが示されなければならない。
 もとより、定数は大いに議論したらいい。ただ、適正な規模は国会機能との見合いで定まるものだろうし、住民意思の反映という意味で、選挙制度との調整を図る必要も生じよう。
 削減方法も慎重を期したい。比較的実施しやすい比例代表に限ることは、比例に込められた多様な民意を吸い上げる機能を弱める懸念があるからだ。
 衆参両院が似通った選挙制度を採用し、ほぼ同等の権限が与えられている状況をどう評価するのか。二院制のあり方も問い直さないわけにはいくまい。
 衆参院選をめぐって「1票の格差」訴訟が続く。昨年8月の衆院選小選挙区選挙に関する訴訟では「違憲」「違憲状態」の判断が相次ぎ示された。広がる方向にある格差の是正とセットで定数を見直す方が理にかなっているようにも見える。
 民主党は衆院比例80削減について、参院選後の臨時国会で公職選挙法改正案を提出する方針を打ち出した。消費増税に有権者の理解を得たいための選挙対策と受け止められた。
 定数削減は各党の消長に直結し、政治課題に上れば激しい対立が表面化する。与野党が歩み寄れる、国会の機能充実につながる改革へ、腰を据えた議論を望みたい。本質論を置き去りに結論を急ぐべきではない。

2010年07月03日土曜日

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