【萬物相】安保不眠症

 2001年に米国で9・11テロが起こった当時、ホワイトハウスは全職員に「疎開命令」を下したが、それほどの非常事態の中にあっても通常の勤務を行う部署があった。大統領執務室(オーバルオフィス)があるウエストウイング地下1階のシチュエーションルームだ。1日24時間、外交・安全保障に関するあらゆる情報を取り扱う部署だ。

 2008年末、オバマ政権のホワイトハウス国家安全保障補佐官にジェームス・ジョーンズ氏が任命された。すると、1970年代にニクソン政権でこの地位にあったキッシンジャー氏が、「セーフティーネットもなく、1日24時間にわたり、綱渡りの仕事を行う地位に任命されたことをお祝いする」と述べた。安全保障補佐官は昼夜に関係なく、厳しい業務を行わねばならず、関係する別の閣僚たちの間での綱渡りもしっかりとこなさねばならない。キッシンジャー氏の言葉は、まさにそのようなことを意味していた。

 ライス国務長官は在任中、毎朝4時ごろに起きて国務省庁舎のトレーニングルームに向かった。ライス氏は「運動のために毎朝あの時間に起きる人はほとんどいないだろう」と話す。1年の半分以上、海外へ出張しなければならず、国内でも休む間もなく仕事に没頭しなければならないからだという。これでは運動する時間を早朝にしか取れないのも無理はない。現職のミューレン米統合参謀本部議長も、早朝4時から運動しているという。

 国の危機は予告なしに突然やって来る。そのため、どの国でも安全保障の責任者は24時間365日、常に緊張状態を強いられる。世界の警察国家とされる米国の安全保障担当者たちならおさらだろう。米紙ワシントン・ポストも先日、「一晩中寝られない」という見出しで、オバマ政権の外交安全保障担当者の激務と苦悩について報じている。

 ゲーツ国防長官は、執務室の寝室横にある「コウモリの洞窟(どうくつ)」と呼ばれる防音の密閉室で会議を開き、世界の各地に展開する米軍と連絡を取り合っている。国土安全保障省の職員は海外に出張する際、睡眠中も1時間ごとに起きて電子メールを確認しなければならないため、深夜もアラームをオンにしておく。中央情報局(CIA)のパネッタ長官は、「クリントン政権でホワイトハウスの秘書室長を務めていた当時、夜中に大統領と話をしたいという電話を受けたこともある。しかし最近は、夜中に電話を受けるのは、誰かの生死に関する決定を下すためのものだ」と語った。韓国で哨戒艦「天安」が撃沈された当時、軍の最高責任者が酒に酔っていたとか、指揮統制室外の執務室で数時間にわたり睡眠を取ったという話が問題となった。韓国の安全保障責任者も徹夜で働いているのか、気になるところだ。

申孝燮(シン・ヒョソプ)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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