「無税の人」只野範男氏の優雅な生活
無税の人――35年間、所得税や住民税を払わなかった男が、いま話題になっています。
その男、只野範男氏は、コンピュータ保守サービスの中小企業に勤めるサラリーマンです。仕事の傍ら、趣味のイラストを描いて「副収入」を得ています。
そうして、イラストの画代の収入を損益計算し収支を赤字にして、いったん給与で納めた税金を全額還付してもらっているのです。毎月の給与から源泉徴収されている所得税や住民税を、イラスト描きでかかった経費で赤字にして、税金を取り戻す仕組みを作り、これを自著『無税入門』(飛鳥新社)の中で、「無税装置」と呼んで紹介しています。
給与から税金を天引きされている通常のサラリーマンには、天国のような話ですが、本当にこんなことが可能なのでしょうか?
「わたしのいう『無税装置』の仕組みはごく簡単。副業をやって、その収入以上の経費がかかれば赤字になる。その赤字を事業所得として、サラリーマンの収入と合わせて確定申告すれば、給料から天引きされていた源泉徴収税が戻ってくるという、税制の基本を活用しているだけの話です。別に悪いことをしているわけはありませんよ(笑)」(SPA!11月4日号より)
と、只野氏は、誰にでも可能なスキームだとサラッといっているのです。
「税金が全額戻ってくるなんて夢のようだ」と思われる方が多いと思いますが、このスキームはまったく新しく、これまで見たことがないというわけではありません。
例えば、サラリーマンが副業でマンション投資を行うのは、この方法によく似ています。金融機関から資金を借りて、ワンルームマンションを購入し、それを賃貸物件として運用するわけです。そうすると、賃貸料が副収入として手元に入りますが、金融機関への返済金やその他の経費を相殺すると赤字になり、その分を損益通算すると、サラリーマンの給与から徴収された税金(所得税や住民税など)が還付されるわけです。
当然、赤字額が大きくなるほど、税金の還付額が大きくなり、中には只野氏のように全額戻ってくる人もいるわけです。
ここで注目したいのは、マンション投資の場合は不動産所得として認識されますが、只野氏の場合には、イラスト描きが「事業所得」として認められているところです。
なぜなら、これまでサラリーマンの副収入はほとんど雑所得と認識されていたからです。もし只野氏の場合も雑所得になってしまうと、雑所得の赤字は他の所得から、損益通算できませんから、給与所得から源泉徴収された税金の還付は受けられません。
本来なら「事業所得」とは認められない?
では、なぜ只野氏のイラスト描きが「事業所得」として認められたのでしょうか?(次ページへ続く)