出張助産:山口市の米屋さん奮闘 「妊婦や赤ちゃんの思いを尊重」 /山口
◇理想を目指し5年
山口市の助産師、米屋(こめや)麻香(あさか)さん(39)が、妊婦の自宅に出向いて出産の相談や手伝いをする「出張助産」に取り組んでいる。都会の総合病院や個人病院勤務では実現できなかった「妊婦、赤ちゃん本位のお産」を目指して5年。米屋さんは「お母さんや生まれてくる子の思いを尊重した『自然なお産』を手助けしたい」と話す。
米屋さんは同市出身。関西の看護系専門学校を卒業後、兵庫県や大阪府の総合病院や助産院、個人病院に約10年勤めた。
総合病院は年間約600件のお産を扱う大規模病院で未熟児出産など先進医療にも取り組んでいた。しかし、病院は医師中心で妊婦を尊重する組織ではなかった。妊婦が「分〓台は嫌だ」「横向きで産みたい」などと要望しても一向に聞き入れられなかった。
次に勤務した個人病院では助産師は米屋さんだけ。しかも、米屋さんが来るまでは看護師、准看護師が助産師にしか認められていない助産行為を日常的にしていた。
「産む人のことを本当に考えているのか。お母さんや赤ちゃんを第一に考えた助産師になりたい」。5年前、理想の助産師を目指し実家がある山口市に舞い戻り、開業届を出した。
個人の「出張助産」として立ち会ったお産は現在、26人。いつも妊娠20週前後から妊婦宅に出向いて定期健診。その際、妊婦や家族とさまざまな会話をするが、それは家族の中での妊婦の立場や、どんな出産を望んでいるか知るためだ。
出産時も家族と一緒に妊婦を励まし、アドバイスするが、必要以上の処置はしない。「お母さんをはじめ、生まれてくる子や家族に『一緒に力を合わせて産まれた』という実感を持ってほしい。そのお手伝いができれば」と米屋さんは笑顔で話す。
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