きょうの社説 2010年7月9日

◎能登空港目標超え 「帳尻合わせ」の努力も貴重
 ここまで地元が搭乗率に一喜一憂する空港は全国でも例がないだろう。そのこだわりが 、空港を支える原動力でもある。

 能登空港の羽田便は搭乗率保証の年間目標となる62%をクリアし、今月7日から就航 8年目に入った。4月末段階では60・4%と低迷し、達成が危ぶまれたが、5月の月間搭乗率は66・7%、6月は72・0%と伸び、何とか62・2%(速報値)に達した。

 地元老人会や商工団体、企業などがツアーを組み、利用を上乗せした結果である。ビジ ネス、観光需要に恵まれた空港からすれば、何もそこまでと思うかもしれないが、地域との濃密なつながりは能登空港の生命線である。

 搭乗率保証制度は目標値の上下4%の範囲内であれば、県、航空会社双方に保証金など の支払いが生じない仕組みである。目標を下回っても地元は損をしないが、1度でも62%を割れば、あきらめの気持ちが芽生える恐れもある。目標超えは譲れぬ一線だろう。

 首都圏から人を呼び込み、能登の活性化につなげるという空港本来の目的を考えれば、 地元より首都圏の利用者が多いにこしたことはない。だが、たとえ帳尻合わせであっても、搭乗率の低迷に危機感を抱き、目標超えに住民が力を合わせる努力は貴重である。

 全国に先駆けて導入された搭乗率保証は、自分たちの空港という認識を地域に植え付け たことは間違いない。そうした思いを空港に近い自治体にとどまらず、能登全体で共有することが大事である。月ごとの搭乗率や地元、首都圏客の割合など路線データをきめ細かく開示し、空港経営への参加意識を広げたい。

 県によると、能登空港の昨年度収支は約2億9千万円の赤字だったが、年間の経済効果 は約41億円という民間調査機関の数字もある。空港が能登活性化への前向きな気持ちを引き出す効果も加味すれば、その存在価値は数字だけでは測り切れないだろう。

 空港ビルに行政機関を集中させ、「道の駅」登録や地域イベント開催など、これまで先 駆的な空港活用策が進められてきた。官民でさらに知恵を絞り、全国に誇りうる「名物空港」にしていきたい。

◎中国の軍事費増大 日印協力を安定の重しに
 中国の「軍事費」の増大ぶりが、中国軍幹部の手による内部報告書で裏付けられた。中 国の急速な軍事力の拡大は、日本をはじめアジア諸国の安全保障上の脅威であり、不安定要因である。日本とインドが先ごろ、外務・防衛の次官級定期対話を初めて開催したのは、こうしたアジアの安保環境を見据えたものであり、日米同盟を基礎とした日本とインドの安全保障分野の協力強化は、アジア安定の一つの「重し」として意義を増すことになろう。

 菅民主党は政権公約で「中国の国防政策の透明性」を求める姿勢を明確にし、インドや オーストラリア、韓国などとの防衛協力の推進を主張している。鳩山前政権と一線を画す現実主義の外交・安保政策と評価できる。

 民主主義や人権、法治などの価値観を共有する日印両政府は、2008年に「安全保障 協力に関する共同宣言」に署名し、防衛協力計画などを策定している。

 政府が、核拡散防止条約(NPT)に未加盟のインドとの原子力協定締結交渉に踏み切 ったのは、原発輸出という経済的目的だけでなく、シーレーン(海上交通路)防衛や中国の軍拡をけん制する安保戦略も考えた上での現実的、総合的な判断といえる。目先の経済的利益のために、核廃絶を訴えるべき被爆国の節を曲げた、といった批判は短絡的に過ぎよう。

 むろん、インドに提供する原子力関連技術の軍事転用を禁ずる手だてを講じ、絶えず核 軍縮をインドに求めていく必要はある。

 海洋強国をめざす中国は、太平洋への窓口となる東シナ海や南シナ海での勢力拡大のた め、海軍の増強に一段と力を入れると予想されている。中国側からみると、日印安保協力は「中国包囲網」と映るかもしれないが、インドは一方で、中国が主体の上海協力機構にオブザーバー参加する戦略的な行動をとっている。

 日印とも中国との信頼関係に力を注ぎ、経済の相互依存を強めながらも、安全保障の「 戦略的パートナー」として行動する。そうしたしたたかさが、現実の国際政治を生きる上で必要である。