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【連載企画】ブランド牛存亡のとき(上)
(2010年5月16日付)
残る6頭最後の望み 宮崎の宝守らねば
「あそこだけは守らんと宮崎の畜産は終わる」。今月上旬、宮崎市の50代和牛繁殖農家は不安に駆られた声でつぶやいた。人工授精や競り市が中止になり、餌代だけがかさむむなしい毎日。被害農家の苦しみと同様に気掛かりなのが、人工授精用の精液ストロー約15万本を県内一円に供給する同事業団の行方だ。
□ ■
同事業団は1973(昭和48)年、黒毛和牛の優れた肉質を追求することを目的に発足した。県の委託を受け、種雄牛と採取した精液ストローを集中管理。県内の家畜人工授精師らに供給する役割を担う。
優秀な子牛20万頭を送り出したとされる種雄牛「安平」全盛期では、その子牛とほかの子牛とでは7万円以上の価格差がつくこともあるなど、時代を代表する「エリート牛」の存在が本県を飼育頭数全国3位という一大産地に押し上げた。
改良の成果が結実したのが、2007年に鳥取県で開かれた全国和牛能力共進会だ。種牛、肉牛部門の計9区分中7区分で本県勢が首席を獲得。「宮崎牛」は全国屈指のブランドにのし上がった。
6頭の移動を明らかにした13日の県の会見。「ブランド維持のため、断腸の思いでやらざるを得なかった」。県農政水産部幹部は多くの牛や豚の殺処分が続く中、特例措置の理由を苦渋の表情を浮かべながら説明した。
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種雄牛は選抜に膨大な時間を要する。毎年、県内で飼育される約10万頭の雌牛から350頭を選抜。主力として活躍する種雄牛の精液を交配し、生まれた雄から23頭を選び、数カ月飼育。発育状況などから9頭まで絞り込んで、試験交配。生まれた子牛の肉質などを見極めた後、種雄牛としてデビューする。
市場で種雄牛としての評価が固まるには子牛が枝肉になるのを待つためさらに2、3年。1頭の「エース級」の種雄牛をつくり上げるのに10年近くを要する。このサイクルを堅実に繰り返すことで本県は「日本一」の血統をつくり上げてきた。
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毎年、多額の改良対策費を投じて、次世代の種雄牛づくりを続けてきた県。想定をはるかに上回る口蹄疫のまん延に、種雄牛はわずか6頭だけとなり、「経過観察」という首の皮一枚でつながった形だ。「宮崎の宝」は存亡のときを迎えている。
【写真】県家畜改良事業団で口蹄疫の疑似家畜が確認されたのを受け、通行規制が行われた施設南側の道路=15日午後、高鍋町持田