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家畜事業団感染疑い 隔離6頭は経過観察

(2010年5月16日付)


 県家畜改良事業団(高鍋町)で口蹄疫の感染疑いがある肥育牛が確認されたことが15日、分かった。既に二百数十頭の肥育牛の全頭殺処分を始めている。関係者によると、本県の和牛生産を支える人工授精用の精液を採取するための種雄牛55頭について県は、西都市に避難させている主要な6頭を経過観察、残る49頭は殺処分の方向で検討を進めているという。肥育牛と種雄牛は畜舎が同じ敷地内にあるため。口蹄疫問題は宮崎ブランドの拠点にまで広がった。県は16日未明に事実関係を公表する見込み。

 関係者によると、14日に同事業団の肥育牛を管理する後代検定センターから感染が疑われる症状の牛がいるとの報告を受けた宮崎家畜保健衛生所が検査。外見から疑似患畜と判断した。同日中に同じ畜舎の10頭を殺処分し、15日も処分を継続したという。

 同事業団は県の外郭団体で1973(昭和48)年に設立した。優秀な血統の牛を交配させた種雄牛を一元的に管理。精液を凍結保存した人工授精用のストローを年間15万本、県内一円に供給している。人工授精により生まれた子牛は県内で肥育され、肉質の良いものは宮崎牛となるほか、県外の有名産地で肥育され、松阪牛や佐賀牛などとして市場に流通している。このため、種雄牛は県が「宮崎の宝」と位置付けているだけでなく、県外産地からも「失ってほしくない」との声が上がっていた。

 同事業団が生産しているストローのうち9割は、避難している6頭のもの。14日まで2日間かけて、約20キロ離れた西都市尾八重の仮設牛舎までトラックに載せて移動した。遺伝子検査で感染していないことが確認されている。当初は西米良村への避難を予定していたが、感染防止に万全を期すため、周囲約5キロに畜産農家がいない現在地へ変更した。

 県産和牛は、2007年に開かれた5年に1度の「和牛のオリンピック」と呼ばれる和牛能力共進会の種牛、肉牛の2部門で最優秀の内閣総理大臣賞を獲得した。出品された牛はいずれも同事業団の種雄牛の血を引いている。

 同事業団は移動制限区域に含まれた4月21日からはストローの供給を停止している。

【写真】肥育牛に口蹄疫感染疑いが確認された県家畜改良事業団=高鍋町持田