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口蹄疫Q&A

(2010年5月13日付)

 Q 口蹄疫はどんな病気か。

 A 牛や豚、羊、ヤギなど蹄(ひづめ)が偶数ある偶蹄類に感染するウイルス性の病気。40〜41度の発熱や多量のよだれ、口や蹄、乳に水ぶくれができる。餌を食べなくなり肉量や乳量が大きく減る。致死率は高くないが、抵抗力の弱い子牛や子豚は死ぬことも。ウイルスにはA、O、Cなど七つの血清型があり、今回はアジアに多いO型が検出されている。潜伏期間は一般的に牛で1週間、豚で10日間とされる。

 Q なぜ感染すると殺処分しないといけないのか。

 A 非常に伝染力が強く、瞬く間に動物間に広がり、産肉量や産乳量を激減させるため畜産経済に深刻な影響を及ぼす。日本は、口蹄疫は海外から侵入する最も警戒すべき伝染病と位置づけている。感染源を絶ち、まん延を防止するために発生農場周囲の家畜の移動を制限し、発生農場で飼育されていた家畜はすべて殺処分するよう家畜伝染病予防法(家伝法)で定めている。

 Q 数万頭の家畜をどうやって殺処分するのか。

 A 今回は電気ショックや薬品注射、その組み合わせで実施するほか、二酸化炭素で窒息させることもある。動物を殺す作業は獣医師でないとできないため、今回のように多数の場合は作業に遅れが出ることも懸念されている。県内だけでは人手不足なので、12日現在で県外から獣医師192人が派遣されている。

 Q なぜ埋めるのか。その方法は。

 A ウイルスは宿主の家畜が死んでも、2、3日は生きる。まん延防止のために家伝法で焼却か埋却処理が義務づけられている。移動させるとウイルスをまき散らす恐れがあるので、発生場所に埋めるのが原則。今回は農場近くの耕作放棄地や公有地も使われている。深さ約4メートルの穴に1体ずつ並べ、消毒用の消石灰を投入している。埋却後3年間は掘ることが禁じられる。

 Q 国内外での発生事例は。

 A 国内では92年ぶりに、2000年に宮崎市と近辺で発生、35頭を処分した。北海道でも同年5月に発生し、705頭を処分している。海外では今年1月に韓国で牛に発生し、一時は収まったとみられたが4月に牛、豚で再発生した。中国でも1〜4月に報告されている。1997年には台湾、2001年に英国で大流行し、いずれも数百万頭を処分した。

 Q なぜここまで感染が拡大したのか。

 A 一つには川南町が畜産の密集地帯だからというのが、爆発的な増加の背景にある。県内の牛、豚の飼育頭数(約120万頭)で同町の占める割合はおよそ8分の1。前回は密集地でなかった事情もあるが、感染力の弱いウイルスだったとの指摘もある。農林水産省牛豚等疾病小委員会の委員長は「人や車両などの移動で拡散している疑いが強い」との見方を示している。

 Q 被害総額は。市民にどんな影響があるのか。

 A JA宮崎中央会の試算では8日の時点で110億円。食肉、流通業、地域経済への波及を考えると、さらに深刻。本県は養豚の飼育頭数で全国2位、肉用牛は3位の畜産王国。農業産出額3246億円(08年)の6割を畜産が占め、感染拡大が止まらなければ地域経済への影響は計り知れない。

 Q 一般の県民ができることは何か。

 A 地元の農家はウイルスがどこから忍び寄るか不安におびえている。人の服や車に付着したり、風に乗ったりして感染が広がる恐れもある。まず、むやみに農場に近づかないこと。川南町内の農家は消毒ポイントで畜産関係だけでなく、一般の車両も消毒に協力してほしいと呼び掛けている。(監修=宮崎大学農学部・後藤義孝教授)

【写真】2000年に本県で確認された口蹄疫と同型のウイルス(農研機構動物衛生研究所提供)