2010年7月8日木曜日

国民新党・亀井代表、ワールドメイト教祖との共演で選挙活動?

対談する深見東州氏(左)と国民新党・亀井静香代表(右)
 7月7日、国民新党の亀井静香代表が都内で、宗教団体「ワールドメイト」の教祖・深見東州(本名・半田晴久)氏との対談イベントに出演。主催団体は深見東州氏が代表を務める経営コンサルティング会社「菱法律経済研究所(菱研)」です。この席で、亀井氏が菱研の顧問に就任したことが明らかにされました。

■亀井氏が「ポンと10万円」寄付

 7日、東京・恵比寿のイベントホールで開かれたイベントのタイトルは「深見東州と亀井静香の爆笑政界なで斬り対談」。菱研の会員しか入場できない無料セミナーです。菱研の代表であり、イベントで亀井氏と対談した深見東州氏は、静岡県に総本部を置く神道系宗教団体「ワールドメイト(旧コスモメイト)」の教祖でもあります。出入りしていた亀井氏側関係者らしき人物によると、会場に観客数は「1200~1300人くらい」とのこと。会場の定員は700人です。

 壇上に亀井氏と深見氏が同時に登場すると、深見氏が「亀井静香先生です」と紹介。観客たちは「亀井静香」と書かれたカードを掲げて大歓迎です。

「メルマガでお知らせしました通り、亀井先生とは浅からぬ縁(えにし)でございまして、十数年前に盲人ゴルフの世界大会やってますと、亀井先生が泊っておられるホテル、浴衣姿でね。ポンと10万円寄付していただきました」(深見氏)

 亀井氏が衆議院議員に初当選したのは1979年。十数年前と言えば、すでに国会議員です。しかも、後述するワールドメイト関連裁判が続出していた頃。

 この対談の中で亀井氏は、小泉純一郎元首相との思い出話や、警察官時代に自分が警察に逮捕されてしまった体験談など昔話を披露。会場からは笑い声も起こり、ウケはよかったようです。途中、深見氏が

「鈴木宗男さんも菱研の顧問ですけど、今度、亀井先生が菱研の顧問になっていただきましてね」

 と語ると、会場から大きな拍手。亀井氏は、

「みなさんよろしくお願いします」

 と頭を下げていました。菱研のサイトによると、同社の顧問には現在、伊藤憲一・國弘正雄・鈴木宗男・栗本慎一郎・園田天光光・西村眞悟・梅田善美各氏が名を連ねています。

 この日のセミナーは七夕に合わせて開催されたものらしく、7時7分にカウントダウンとともに壇上で亀井氏と深見氏が缶ビールで乾杯。それに合わせてフロアの観客も缶ビールを高々と掲げていました。

 まるで会場で見てきたように書いていますが(まあ、いちおう見たと言えば見たんですが)、このイベントは「クローズドなセミナーなので取材はお断り」(菱研広報担当者)。本紙・藤倉は、会場前のモニターで亀井氏と深見氏の対談を拝聴するだけで、会場には入れてもらえませんでした。亀井氏側の関係者らしき人物が「うちの番記者だけ(入れる)。フリーはだめ」と言って、新聞・通信社記者だけ会場に入れていましたが、彼らもすぐ会場から出て行ってしまいました。

 藤倉は、途中で菱研の広報担当者からやんわりと追い出されてしまい、モニターでの鑑賞もイベントの途中まで。その後、会場の外で、イベント後に出てくる亀井氏に話を聞くなり写真を撮るなりしたかったのですが、天下の公道で菱研広報担当者に取材を妨害され、それもままなりませんでした。

■ワールドメイトって何?

 さて、会場前で新聞・通信社の亀井番記者のみなさんにも軽く教えてさし上げましたが、深見氏が主宰するワールドメイトは、いろいろ問題のある宗教団体です。

 深見氏は1993年に、「教祖にわいせつな行為を受けたうえ中傷され、精神的損害を被った」(1993.03.18毎日新聞)とする女性信者らから訴訟を起こされたことがあります。これは深見氏が計1100万円の和解金を支払い原告が謝罪広告掲載の請求を取り下げることで合意し和解(1993.12.04、毎日新聞)。翌1994年、ワールドメイト(当時パワフルコスモメイト)や深見氏は、「子供の病気を治してもらおうと新興宗教の会員になったところ、六千五百万円余りをだまし取られた」(1994.05.24、読売新聞)とする信者から訴訟を起こされました(後の取り下げ)。この頃、ほかにも信者から提訴されたほか、逆に深見氏らが、当時の報道をめぐって産経新聞社や週刊ポスト(小学館)や日本テレビを提訴したりもしました。また、週刊ポスト「国税庁が目を付けた注目の深見青山の『華麗なる海外資産』」と財界展望「『宗教団体』に課税する国税庁の狙い」という記事に関連して、「国税当局が守秘義務に反して提供した情報で記事が作られ、名誉を傷つけられた」として、記事を書いたジャーナリストと国を相手取った訴訟も起こすなど、1994年だけでかなりの数の訴訟が飛び交いました。

 2000年以降も、冬樹社、岩波書店、インフォバーン(現サイゾー)、新潮社や記事を書いた個々のジャーナリスト、ネット掲示板の投稿者などをワールドメイト側が次々と提訴。和解や取り下げやワールドメイトの敗訴判決など結果は様々ですが、その詳細はワールドメイト被害救済ネット事務局長である紀藤正樹弁護士のサイトに記録されています。

 この中で興味深いのは、冬樹社「PSIKO」の記事をめぐる訴訟でワールドメイト側の賠償請求が退けられた03年の地裁判決。ワールドメイトを「邪教」と評したPSIKOに対して、判決は「特段不公正なものとはいえず、論評としての域を逸脱したものと評価することはできない」としました(「邪教判決」)。この訴訟ではワールドメイト側が控訴しましたが、和解。紀藤弁護士はサイト内で「謝罪もないのに、一方的に訴えを取り下げて和解するというのですから、これはプシコ側の勝訴的和解です」としています。

 訴訟はほかにもありますが省きます。05年以降の訴訟関連情報は、紀藤弁護士のブログにあります。

 また、ワールドメイトをめぐっては現在も大阪の信者が提訴中のようです。09年7月に全国霊感商法対策弁護士連絡会が開催した電話相談会「霊感商法110番」では、39件あった相談のうち、ワールドメイトに関する相談は9件で、統一協会の26件に次ぐ多さでした。

■なんで亀井氏が深見氏と?

 亀井氏は、こうした団体の教祖とどうして共演することになったのでしょう。2人の関係については、今回のイベントを告知した「Toshu Fukami・メールマガジン」で少し触れられています。

【Toshu Fukami・メールマガジンvol.908 2010年07月04日】
(略)
 亀井静香さんとは、もう10数年以上前に、初めて縁がありましたが、一度もお話しした事がありませんでした。その縁とは、ブラインドゴルフ(盲人ゴルフ)の大会を、伊豆のサザンクロスゴルフ場で開催してた時、大会の会場となったホテルに、たまたま亀井静香さんが泊まっておられたのです。そして、「いいことやってますね」と言って、ブラインドゴルフにポンと10万円寄付して下さったのです。その事は、大会終了後に知りました。菱研顧問の栗本慎一郎さんも、自民党当時、亀井派に居たことがあり、その会で演説を聞いた事があります。メチャメチャ面白くて、笑い転げた事だけは覚えています。
 ところが、雌島雄島の神業が終わった後、急にひょんな事から、お会いすることになったのです。亀井さんは、「盲人ゴルフを始め、20年以上も続けてるあなたの活動や才能は、本当に立派です。もう、神様のような方だ!」と言って、ずっと手を合わせて拝まれるのです。何かを直感で感じられたようです。私も手を合わせ、「亀井先生は、もう亀さまです」と、言いそうになりましたがやめました。
 その後は、ギャグと下ネタと、爆笑政界なで斬り対談が続きました。驚くような笑える武勇伝があり、神仏の強力な守護なくしてはあり得ない、奇跡が続いた足跡なのです。(略)

 ここに登場する「ブラインドゴルフ(盲人ゴルフ)の大会」とは、深見氏が代表を務める日本ブラインドゴルフ振興協会(JBGA)の関連活動のことのようです。

 深見氏が代表を務める会社の主催イベントで亀井氏が深見氏と対談するとなると、その影響は、単なる個人的な親交と言える範囲を超えてしまいます。亀井氏や国民新党にとってはいい選挙活動になるのかもしれませんが、同時に深見氏や関連活動のアピールや権威づけに亀井氏が利用される可能性もあります。しかも「Toshu Fukami・メールマガジン vol.908」によると、この日のイベントはワールドメイトの活動と切り離されたものではなく、宗教的意味合いも持つイベントでした。

【Toshu Fukami・メールマガジンvol.908 2010年07月04日】
(略)
 こうして、亀井さんとの対談が終わったら、私が七夕コンサートを行います。さらに、七夕ですから、大きな笹を用意して、皆さんに短冊を書いてもらいます。「神様の御心に叶う人が参議院選に通り、日本の国政がよき方向に向かいますように」。国を思う願いを短冊に書き、七夕の神様に届けるのです。もちろん、その後は、自分の願いも書いて下さい。菱研主催ですから、経済や経営、ビジネスや法律、仕事の願いを思い切り書いて下さい。
 ワールドメイトが主催の時は、人類の救済や国の繁栄、ご神業の弥栄の中での、自分の幸せを祈るのが基本です。そして、天命の全う、わが使命や志の成就を祈り、家や仕事や健康や結婚、子供や金運や先祖の事など、何でも祈っていいのです。す神や神々の恵みや愛は、広大無辺のものですが、主催する組織が違うと、霊空間の次元が異なり、現われる神威や神徳も違うのです。三十三相に化身するす神観音の働きの中で、経済や法律や経営の救済をする局面が、菱研なのです。
(略)

 ワールドメイト主催イベントと菱研主催イベントを区別する趣旨の記述ですが、「三十三相に化身するす神観音の働きの中で、経済や法律や経営の救済をする局面が、菱研」という記述から、菱研がワールドメイトと共通した宗教性を標榜する団体であることがわかります。

■紀藤弁護士「見識を疑う」、亀井事務所「党本部から頼まれた」、党本部「わからない」

 イベント前日の7月6日、本紙がワールドメイト被害救済ネット事務局長・紀藤正樹弁護士に対し、現職の国会議員であり国民新党の代表者でもある亀井氏が、こうしたイベントに出演することについて見解を求めたところ、以下のようなコメントでした。

「ワールドメイトは、過去、高額な金銭被害、セクハラ問題等を起こしてきた団体である。政治家がこのような団体の広告塔活動を行うこと自体が問題であるし、見識さえ疑われる」

右へならえ!
 一方、亀井氏の事務所はこんな反応。

「え? 相手はそんな団体なんですか? 全く知りませんでした。(このイベントへの出演は)1000人くらい集まる集会だからということで、選挙活動として党本部から依頼が来たものなんです。(経緯などの詳細は)党本部に問い合わせていただけますか」(担当者)

 で、その担当者から教えていただいた党本部の担当者に問い合わせると、

「まあ、選挙中ですから、こういうことはいろんな人が関わっていますし、経緯はわかりません。重要な問題なので、口頭でのやりとりは控えたい。質問項目をFAXしてください」(党本部の担当者)

 イベント前日の7月6日にFAXを送りましたが、まだ返事はありません。選挙活動の真っ最中で忙しいでしょうし、1日や2日で返答できる内容ではないのかもしれません。しかし選挙中の問題は選挙中に報じるべきとの判断から、記事を掲載しました。ひきつづきお返事をお待ちします。党本部あるいは亀井氏側からの説明やコメントが入り次第、続報を出そうと思います。

1 コメント:

あ さんのコメント...

あんまし考えておらず出ることもあるんじゃない?

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