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【社説】口蹄疫封じ込め

(2010年5月8日付)

冷静な判断とみんなの力で

 口蹄疫(こうていえき)に収束の気配が見えない。感染疑いが確認された農場ではウイルス封じ込めのため、すべての家畜が殺処分されることになる。7日午前までに対象頭数は4万4892頭に上っている。

 殺処分の現場が壮絶なありさまであろうことは想像に難くない。また、感染拡大阻止のためとはいえ家畜をこのような事態で失った畜産農家が気の毒でならない。

 金銭的な損失だけではない。手塩にかけて育てた牛豚が処分され、がらんとした畜舎と同様に、心に生じた大きな空虚が消え去るには長い時間がかかるはずだ。

■不足するマンパワー■

 さらに、新たな問題が生じている。現場で殺処分や防疫作業に従事している人たちの疲労が限界に達しつつあることだ。

 県口蹄疫防疫対策本部によると、牛や豚の殺処分は各家畜保健衛生所やJA、県外から派遣された獣医師らが対応している。

 殺処分を行う際には牛を牛舎につないだり、豚を追い込んだりする補助員が必要になる。

 JA宮崎中央会、同経済連などJA4連は連日、多くの職員を車両や農場の消毒に投入している。

 市町村や自衛隊、県外からの応援も加わって連日千人態勢での防疫活動が続く。

 しかし、一向に事態が収まる気配がなく、逆に処分対象の家畜が急増。ここにきて、作業が追いつかない状況に陥っている。

 県は不足するマンパワーを補うために全市町村の対策本部を通して窮状の打開に手を貸してくれる人員の募集を始めた。

■牛や豚の扱いに精通■

 疑似患畜を放置すると、さらなる感染につながる危険性が高まるため一刻も早く、殺処分する必要性がある。

 そういう事情もあって、口蹄疫の発生現場は可能な限り多くの人手を求めている。ただし、誰でもいいというわけではない。

 過去に家畜を扱った経験があるが、現在は家畜に関与しておらず、自宅が畜産農家に隣接していないことなどの条件がある。

 県職員やJA職員で条件を満たす人はもちろん、県内在住で過去に畜産経験のある離農者などは呼び掛けに応じてもらいたい。

 農林水産省の食料・農業・農村政策審議会牛豚等疾病小委員会は本県で口蹄疫が広がっている問題について「ウイルスは人や車両などの移動で拡散している疑いが強い」との見方を示した。

 つまり、作業に従事する人が広範囲から集まることは感染拡大の危険をはらむ。

 応援に駆けつけるにしても牛や豚の扱いに精通し、防疫についてしっかりした知識と冷静な行動、判断力のある人に限られる。

 畜産は本県の基幹産業であり、多くの人たちの努力で育てられた宝である。

 厳しい状況だが、収束へと前進するため、一人でも多く力を貸してほしい。