野球賭博で揺れている名古屋場所。協会はついに幕内最高優勝に贈られていた角界最高権威といわれる天皇賜杯表彰を辞退した。それだけではない。内閣総理大臣賞(総理大臣杯)、中日新聞社賞など外部からの表彰をすべて受けないことになった。授与されるのは協会内部の表彰である優勝旗だけ。天皇賜杯は1926年春場所(1月)から幕内優勝力士に贈呈され続けてきた、大相撲の国技としての象徴だった。
幕内力士の最高の目標といわれる天皇賜杯。これを勝ち取るということは、力士にとって最高の栄誉といえる。それが今場所はないのだから張り合いがない。「寂しいでしょうね。千秋楽に来ていただく、お客さんも物足りない気持ちになるのではないか」という名古屋場所担当部長の二所ノ関親方(元関脇金剛)も心配する。かつて“ホラ吹き”という異名を持ち、1975(昭和50)年、この名古屋場所で優勝経験を持つ親方は「恐らく横綱白鵬が優勝すると思う。でも初めて優勝する人にとっては、ちょっとかわいそうだ」と心情を思いやる。
優勝旗授与の表彰だけは残ったが、昨年の名古屋場所での優勝力士表彰は23あった。優勝賞金は1000万円だが、優勝力士は副賞として同じ額ぐらい手にすることができると推定できる。
力士が土俵上で勝ち名乗りを受けるとき、手刀を切って受け取る懸賞金も半減が予想される。地元(愛知県岡崎市出身)の英雄だった大関琴光喜が4日に解雇された。「昨年琴光喜に賞金を懸けた地元の企業が半分以上遠慮しているみたい」と二所ノ関親方。呼び出しさんが着用し、土俵で企業のPRをしていたスポンサーもなくなった。今場所は広告収入なしになった。
「問題は協会員全員に責任がある。今回の処置はみそぎという意味合いもある。真摯(しんし)に受け止めなくてはいけないと思う」と二所ノ関親方は口元を結んだ。 (近藤昭和)
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