昼行性蛾類カノコガAmata fortuneiの飼育法と配偶行動
○近藤勇介(岐阜大・応用生物科学)・中 秀司(農環研)・安藤 哲(農工大・BASE)・土田浩治(岐阜大・応用生物科学)
夜行性蛾類や蝶類の配偶行動は研究が盛んに行われているが、昼行性蛾類の配偶行動は研究例が少なく、あまり解明されていない領域である。今回は昼行性であるカノコガを用いて飼育法の開発および配偶行動の基礎データを得たので報告する。
野外成虫より採卵して得られた卵を25℃、14L:10Dの条件下で飼育した。食草としてタンポポが記録にあるため、タンポポの生葉を与えた。また、人工飼料(インセクタ)を用いた飼育もおこなった。その結果、タンポポと同等の発育が認められた。しかし、中齢〜終齢にかけて激しい共食いが観察され、蛹化率は平均で18.6%であった。本種は中齢〜終齢期に動物性タンパクが必要であると考え、タンポポ生葉とともに動物性タンパクとしてキャットフードを与えたところ、蛹化率の向上が見られた(86.5%)。
野外での観察の結果、配偶行動はおもに早朝6:00頃から観察された。交尾に至る過程で雌が腹部を露出させる行動と、その雌に定位する雄が観察された。また、1)かごに入れた雌(視覚+嗅覚)、2)穴を開けた紙で囲った雌(嗅覚のみ)、そして3)ビニルで囲った雌(視覚のみ)を用いて雄の誘引実験をおこなった。結果、3に対して全く誘引されず、本種の配偶行動にはフェロモンが関与する可能性が高いことが示唆された。