去年、トラックが起こした重大な事故の背景を国土交通省が分析したところ、休日も別の会社で運転したり、1週間以上も車内で寝泊まりしながら運転を続けたりといった、運転手の極端な過労が背景にあることがわかりました。
国土交通省は、トラックやバスが起こした重大な事故の再発防止のため、警察の捜査とは別に事故の背景を詳しく調べて公表しています。このうち去年6月、福島県の常磐自動車道で、道路補修の工事現場に居眠り運転のトラックが突っ込み、作業員4人が死亡した事故の運転手は、事故の2日前と3日前は休日でしたが、別の運送会社でトラックの運転をしていたことがわかりました。さらに、事故の前日も国の基準を超える16時間以上の勤務をしたうえ、7時間余りあとの午前1時40分に事故当日の運転を始めていました。また、去年9月、茨城県の国道で脇見運転の大型トラックが信号待ちをしていたワゴン車に追突して3人が死亡した事故の運転手は、9日前から自宅に帰らず車内で寝泊まりしながら運転を続け、事故の前日からはまとまった睡眠を取らず、1200キロ走り続けた末に事故を起こしていました。国土交通省によりますと、運転手の過労につながる無理な運行をさせたとして、平成20年度に運送会社が受けた行政処分などは1266件に上り、その4年前に比べて46%増えています。国土交通省は、不況を背景に極端な過労運転が増えているとみて、運送会社への指導を強化する方針です。今回の調査結果について、トラック運転手の疲労を研究している労働科学研究所の鈴木一弥主任研究員は「経済状況の悪化で仕事が少なくなるなか、運ぶ荷物を求めて疲労を感じながら各地を転々とするドライバーが増えている。過労を防ぐのは、まずは会社の責任だが、きちんとした態勢が取れない小規模な業者も多く、休憩場所の整備など、行政のサポートを含めたあらゆる対策を総動員しなければ、事故はなくならないだろう」と話しています。