日本が捕鯨を主張する理由の一つは、クジラが魚を大量に食べるため、漁業に打撃を与えるとされる点だ。増えすぎたクジラはきちんと間引かなければ共存できないというんだ。
クジラって、絶滅しかけているんじゃないの?
日本捕鯨協会の資料によれば、絶滅にひんしているクジラはいない。昔、乱獲されて激減したシロナガスクジラやセミクジラ(平均体長約15メートル)も絶滅の危機を脱した。ミンククジラ、ニタリクジラなど増えた種類もある。
でも、牛やブタの肉でも魚でもお店ではたくさん売っているよ。外国ともめてまでクジラを食べなくたっていいと思うな。
今の日本の食卓は豊かだが、世界の人口69億人のうち10億人近くが飢えている。昨年11月に行われた食料サミットで、2050年に世界の人口は90億人をこえ、食料確保には農業生産を今より70%増やさなくてはならないと指摘された。クジラをはじめとする海洋資源を適切に管理して食用にしたいと考えている発展途上国は多いんだ。
日本鯨類研究所の調べによると、すべての海域でクジラが食べる量は年に約2億8000万~5億トン。世界の漁獲量は約9000万トンだから、クジラは人間の3~5倍もの魚を食べていることになる。
日本の場合、夏に北海道太平洋沿岸でカタクチイワシ16万トン、サンマ26万トンが水揚げされるが、この海域でミンククジラはカタクチイワシ4万~5万トン、サンマ6万~9万トンを食べてしまう。これは漁獲量のそれぞれ30%にも及び、ミンククジラと人間との間に魚の奪い合いが生じていることがわかる。
世界には、伝統的な漁法でクジラを捕り続け、骨や肉、油を活用している人々がいる。IWCは、アメリカのイヌイット、マカ族、ロシアのチュクトカ族、グリーンランド人、中央アメリカ・セントビンセント・グレナディーンの人々ら先住民が行う捕鯨を認めている。
IWCに加盟していないインドネシアの島でも、手もりを使ってマッコウクジラをしとめる16世紀からの伝統漁法が続いている。クジラは食料になるだけでなく、油は燃料に、干し肉はほかの村との物々交換で貨幣代わりに使われ、トウモロコシなど主食を得るかてになっている。
IWC総会が6月にモロッコで開かれ、次のような議長案が提案される見込みだ。
現在、日本国内の沿岸でミンククジラを捕ることは禁じられているが、2011年から10年間、年に120頭捕獲することを認める。さらに、「商業捕鯨」「先住民による捕鯨」「調査捕鯨」--といった分類をやめて一本化し、海域やクジラの種類ごとに捕ってもいい頭数のわくを設けてIWCが管理する。捕獲できる頭数は今よりも大幅に減る。
ニュースがわかる6月号
【おすすめの本】
「イルカ、クジラ大図鑑 おどろきの能力をさぐる!」(中村庸夫・監修、PHP)
「クジラから世界が見える」(ウーマンズフォーラム魚・編、中村信・絵、遊幻舎)
「ラルースこどもひゃっか イルカとクジラ」(アニエス・ヴァンドヴィルなど・文、小泉祐里・日本語版監修、少年写真新聞社)
「クジラとイルカ 海も地球も大研究!」(山田格、大越和加・総監修、偕成社)
「海洋資源をかんがえる」<「資源」の本(3)>(岩田一彦・監修、岩崎書店)
2010年5月28日