福岡県太宰府市の宝満山は、年間20万人以上の登山客が訪れる、人気の山です。
その宝満山の知られざる魅力を、映像で伝えたいと、ある男性が記録映画の制作に取り組んでいます。
●カメラを構えて畑でインタビューする男性
「今年の麦の出来はどうですか?」
「よかですね」
「よかですか」
麦畑や地元住民たちを撮影しているのは、尾登憲治さん(60歳)。
福岡のテレビ局を去年、退職した元カメラマンです。
この春から宝満山や、その周辺の自然、人々の暮らしを撮影しています。
標高829メートル、修験道で知られる宝満山には、1年を通して多くの登山客が訪れます。
●登山客
「いつもきついんだけど、でもやめられないというか…」(男性)
「歩いていて、いろいろ史跡とかありますね。歴史を思い浮かべて、散策しながらいろいろ考えて登っています」(女性)
尾登さんはこれまで、体力維持のために宝満山を何度も登ったり、現役時代は報道カメラマンとして、取材に訪れたりしてきました。
そうしたなかで、山と地元の人たちの深いつながりや、山の持つ歴史的な意味合いに、興味を抱くようになりました。
●宝満山の四季を良く知る人
「些細なことですが、宝満山に登られるんだったら、あと何日かで山頂の岩の横に、山帽子が咲きます」
宝満山の隠れた魅力を伝えたいと、尾登さんは映画の制作を仲間に呼びかけました。
●尾登憲治さん
「地元の人しか知らないことが、制作の過程でどんどん出てくるんですね。そのあたりをフォローしていきたい。拾いあげていきたいと思う」
先月30日、宝満山のふもとの竈門神社で、護摩焚き神事が行われました。
●尾登さん
「この空いているところにするか。それか正面にするか。神壇の横」
尾登さんら、映画の製作委員会のメンバーが、神事の撮影に訪れました。
●尾登さん
「護摩焚きを奉納する、修験道にとっては大きな行事。映画のテーマが、宝満山の「祈りの山」としての意味を、現代に問い直そうというのがあるので、(護摩焚きは)重要なシーンだと思ってます」
護摩焚きの前に奉納された筑前琵琶。
厳かな空気に包まれます。
奉納を終えた琵琶奏者へのインタビューも、映画の重要な素材ですが…、ばっちり撮れたようです。
護摩焚きの撮影は、煙との闘いです。
●尾登さん
「あれがきれい、太陽の遮光が。ああいう光。ああいうのを撮りたい」
撮影も無事終了したようです。
●映画制作委員会メンバーと
「お疲れさん」
「2時間分まわしたよ」
「回しっぱなし?」
「回しっぱなし(笑)」
撮影するのは、尾登さんだけではありません。
慣れないスタッフの映像を尾登さんがチェックし、指導することもあります。
●尾登さん
「やっぱりこの絵は厳しいですよね。わからんもん。だから僕はこれを捨てたんです。少し僕の方が経験があるので、こうしたらいいとか言いながら、映像を撮るときの感じを、揃えていけたらいいですね。長丁場ですからね」
今年3月から、撮影を始めた尾登さんたち。
これまでに満開の桜や野鳥、修験者たちなど、宝満山周辺のさまざまな事象、風景を記録しています。
尾登さんは来年の春まで1年間撮影を続け、山の自然と人との交わりを映画にまとめます。
各地で上映会を開いたり、学校で子供たちに見てもらったりして、宝満山の魅力を伝える資料にしたいと考えています。
●尾登さん
「昔は高くて美しい山ばかりを目指していたけど、こういった里山に近いような、人々の思いのこもった、それほど高くないけど、人々の暮らしと共に眺めると、とっても美しいと。そんな感じが最近わかってきたんですよね」