―開業当時は、まだ精神科や心療内科も少なかった時代ですよね?
そうなんですよ。当時はまだ、川崎市内でも4〜5医院ほどしかなかったと思います。今は本当にポピュラーになりましたが、開業当初は遠方から通ってくださる患者さんも多かったですね。患者さんにとっても、精神科にかかるということは、いまよりずっと敷居が高かったんじゃないかと思います。最近はちょっとした不安でも気軽にいらっしゃる方が増えていますよ。それで話をじっくり聞いてみると、「あなた大丈夫だから、もう来なくて平気ですよ」ってこともあります。そういうかかり方でいいと思うんですよ。
―先生は女性ということもあって、女性の患者さんにも頼りにされているのでは?
女性の方の相談には、子育てのことでストレスをためてしまっているとか、夫婦間の問題で悩みを抱えているといったこともありますから、そういうときにはやはり、女性の精神科医の方が、患者さんも安心してお話できるみたいです。いくら医師でも、男性相手では話しづらいところもきっとあるんでしょう。でも、男性でも女性でも同姓の方が共感しやすいというのはあると思います。あと、私は特に小児専門というわけではないんですが、10代前半の患者さんを診ることも多いですね。他の医院でも、高校生以上は診るというところは多いんですが、中学生を診る先生は少ないようです。私は研修医のときに小児科を回りましたので、中学生以下の患者さんでも診るようにしていますよ。大人よりも中学生の子の方がデリケートだし、確かに難しい部分はありますが、この場合も、男性医師よりも女性医師の方が話しやすいという部分はあるかもしれません。
―最近増えているなと感じる、患者さんの傾向はありますか?
うつ病とパニック障害が増えていますね。それ以外では乖離(かいり)性障害も最近目立つように思います。ストレスの強い場面に直面すると、記憶が飛んでしまったり幻覚に逃げてしまうんですね。以前なら、感情のコントロールができなくなると、暴れだしたり大声を出したり、興奮状態になる人が多かったんですが、私の印象では最近は、そういう症状の出方をする人が減ってきたように思います。人間のエネルギーが低下しているのかもしれませんね。
―最後に、患者さんにとってどんな精神科医でありたいと思っていますか?
自分ができる最良のものを、常に提供できる医師でありたいと思っています。当たり前のことですが、それが患者さんにとっては何より大切なことだと思いますから。