溝の口駅南口からほど近いビルの2階に上がっていく。シンプルな入り口を開けると、壁に木をあしらった温かな内装の待合室が現れる。かわむらクリニックは、溝の口に開業して15年目を迎える精神科、神経科、心療内科だ。河村院長を訪ねると、やさしい笑顔で出迎えてくれた。そして、どこか落ち着く空間は、ここが医院であることを忘れてしまいそうなほど。忙しい合間を縫って、取材に応じてもらった。(取材日2009年3月26日)
―こちらに開業されたのはいつ頃ですか?
1994年の開業ですから、いまから15年前です。もともと出身が川崎なので、溝の口は地元のようなもので(笑)。それに、いまはもうなくなってしまいましたが、ここの道路を隔てた向こう側で、親戚が内科の医院をやっていたんです。そういうこともあって、ここはとてもなじみ深い場所なんですよ。
―周囲の方も医療関係の方が多いんですか?
そうなんです。ですから、私が医学部に進むのも自然な流れではあったんですけど、でも当時は迷いもありましたよ。本当は文学部に行きたいという気持ちもありましたから。中学生の頃から本を読むのが大好きで、文学少女でした。でもいま思えば、文学と精神医学は近い部分もたくさんありますね。
―精神科医を志したきっかけはなんでしょう。
京都府立医科大学に入学して、医学部で全科の勉強を一通りしたんですが、どうも勉強していても、人間の体そのものには興味がわかないんですね。医学自体を学ぶのはおもしろいのですが、つきつめて考えてみると、どうしても人間の精神というか、心の方に興味が向くんです。卒業間際まで、自分は何科の医師になるのか、すごく迷いましたが、最終的に自分の興味に素直に従って、精神科医になることに決めました。
―それ以前にも、人の精神に興味を持っていましたか?
それはやっぱり、ずっとあったと思います。こんなことを言うのは恥ずかしいんですが(笑)、中学生くらいの頃から、「なぜ人は生きるのか?」「生きる意味とは?」というようなことを、考えるのが好きだったんですね。フロイトの本なんかも読んでみたりして、思えばその頃から、人間の精神には興味を抱いていたんだと思います。
―大学時代はどんな学生でしたか?
オーケストラとか室内楽のサークルに積極的に参加していました。それと、精神医療研究会というサークルにも所属していて、授業よりもそちらの方が活発だったかもしれません(笑)。