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ウイルス3月侵入か 防疫態勢厳しさ増す

(2010年4月24日付)
 こんなに早くから―。3月末に採取した検体からも感染疑いが確認されたことで、口蹄(こうてい)疫は3週間以上も前から本県に侵入していた可能性が高まった。当初は「前回の教訓を生かす」と、初動の防疫態勢に自信を見せてきた県担当者も、一刻も早い終息宣言を願う農家も疲労が募りつつある。新たな感染被害を防ぐ戦いは厳しさを増してきた。

 1例目を確認した20日から、わずか4日間で6例目。家畜の殺処分や埋却処分、幹線道での消毒など対応を取りながら、感染ルートをたどるために重要な疫学調査にも追われている。

 餌の仕入れ先や人の行き来など共通点、類似点の洗い出しに全力を挙げるが、着手できたのは1例目から3例目まで。共通点、類似点が少しでも疑われる農場は1例目だけでも121農場に上り、調査を終えたのは102農場にとどまる。23日に確認した4例目には未着手だ。さらに、封じ込めに向けて、県内で牛や豚など偶蹄(ぐうてい)類を飼育する全施設の消毒にも乗り出す。畜産王国だけに対象は肉用牛1万100戸、養豚623戸、酪農374戸と膨大だが、「1カ月は継続し、消毒を徹底する」(県畜産課)と強い意志で臨む。

 3月31日に採取した検体の感染疑いを確認するまでに時間を要したことで農家に波紋が広がる。県は「主な症状は下痢だったため、アデノウイルスやコロナウイルスを疑った」と強調。「検体が保存されていたので見逃さずに済んだケース」と説明する。

 しかし、川南町の繁殖農家は「もっと早く、何らかの手だては打てなかったのか。拡大を広げずに済んだのでは」と対応に不信感を抱く。「もしも異常があったらと思うと、牛舎に行くのが怖い。先行きが見えず、精神的にきつい」と疲れ切った様子だ。

 県畜産課の児玉州男課長は「移動制限区域も変わらないので、打つ手はこれまでと一緒。徹底的な封じ込めに努める」と、静かに語った。

【写真】口蹄疫疑いの5、6例目が確認されたことを発表する県畜産課幹部=23日午後8時、県庁