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農家「被害最小限に」 不安の中殺処分や消毒

(2010年4月21日付)
 口蹄(こうてい)疫に感染した疑いのある牛3頭が都農町で確認された20日、ひっそりとした山中の現場周辺は物々しい雰囲気に一変した。一方で、農場で飼育されていた牛の殺処分や関係車両の消毒など「やるべきこと」が黙々と進められ、事態の沈静化が図られた。畜産農家からは不安とともに「過剰な反応はいけない」という冷静な声も聞かれた。

■現場

 農場へ続く2カ所の入り口には午前9時ごろに県警が規制線を張り、立ち入りを禁止。上空には報道機関のヘリコプターが旋回するなど、周辺は一日中、慌ただしさに包まれた。

 飼育していた全16頭を殺処分し農場内に埋めるため、午後4時半ごろに大型重機が到着。岩を砕くようなごう音は、日没後も静かな山あいに響きわたった。午後7時ごろには投光器が点灯、作業は夜間まで続いた。

■畜産農家

 約300頭の牛を飼育する都農町川北の50代男性は「10年前を教訓に、どの農家も消毒などに努めている。見えない敵だけにどうしようもない」と不安気な表情。「出荷できずに飼育代だけがかさみ、経営はさらに逼迫(ひっぱく)する。国の支援を待ちたい」と迅速な対応を求めた。

 過去に口蹄疫や鳥インフルエンザを乗り越えてきただけに、近くに住む別の50代男性は「県やJAと連携しこれまでの経験を生かし切れば、被害は最小限に食い止められる。過剰反応はいけない」と冷静に受け止めた。

 ウイルスの型によっては感染の恐れが出てくる養豚農家は驚きを隠せない。県内有数の生産地、川南町川南の30代男性は「ウイルスの分析結果を待つしかない。ただ、その間も含めてしばらくは出荷停止が続き、豚舎は飼育可能頭数を超える。違う病気に感染するリスクも高くなる」と祈るような面持ちだった。

■調査チーム派遣を要請 農水省委員会

 本県で口蹄疫が疑われる牛が見つかったことを受け、農林水産省は20日、専門家による牛豚等疾病小委員会を招集、委員会は疫学的調査のためのチームを早急に編成し、現地に派遣することを要請した。農水省は要請を受け、調査チームの人選を急ぐ方針。

【写真】口蹄疫感染の疑いがある牛が確認された農場近くで、トラックから消毒に使用する機材などを運び出す関係者=20日午後6時11分、都農町